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買い物中  作者: 尚文産商堂


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珍しい依頼

アンダーグラウンドの仲介屋という人を知っているだろうか。

手野市には、表の顔と裏の顔がある。

表の顔というのは手野グループに代表される、超巨大企業グループの企業城下町という顔だ。

そして裏の顔というのは、壁に囲まれた治外法権のエリア、通称負犬地区だ。

出入り口が公式には存在していないこの町だが、出入り口となる場所が一カ所だけある。

そこにアンダーグラウンドの仲介屋はいる。


外と中をつなぐ一区画。

手野市桜町が正式な住所であるが、このあたりの人はそんな言い方はしない。

(みち)と呼んでいる。

負犬地区は中、道を通って外に出れる。

出入りはかなり自由ではあるそうだが、どうやって出入りをしているのかは、表向きには誰も知らないことになっている。

その中で出入りするための最大の業者となっているのが、仲介屋だ。

本名は本人しか知らないといわれているが、本人もその素性は誰も知らない、あまりにも謎だらけの人物だ。

その人脈は手野グループの中枢や警察、行政、司法、暴力団、近所のおばちゃんに至るまで、とてつもなく幅広い。

私は、両親を殺した人らに復讐をするため、そのためのお金を稼ぐために5年間という任期付きの雇用契約を結んでいる。

表向きはお手伝いさんということで彼は言っているが、中身は秘書のようなことをしている。

今は1年半ほど過ぎたところだが、どれだけお金がたまったかは詳しく知らない。

多少はお小遣いだということで受け取っているが、その金額も数千円から数十万円まで月によってばらばらだ。


今日は、そんな私に仲介屋から依頼が来た。

初めての彼からの依頼だ。

「買い物に行ってくれないか。買うものリストはここにあるから」

普段読んでいる手野新聞は、今日はカウンターの横にたたんでおかれている。

彼がいつもいるのは、気でできたカウンターの向こう側だ。

玄関から一直線、その玄関も私が来た頃から使っているカウベルを模したドアベルがある。

どうやらこれがお気に入りらしく、暇なときに一人で触って鳴らしているのを見たことがある。

「はーい」

メモ用紙に使っていたのは、この前買っていた、ピンクのパンダのロゴが描かれた縦横7cmの紙だった。

「お金も渡しておこう。余ったら何か好きなものでも買うがいい」

「ありがとうございます」

彼は茶封筒をドンと渡してきた。

札束かと思って思わず中を確認する。

「中身は千円札だぞ」

なんというか、古典的ないたずらだ。

「では行ってきます」

かばんはここにきてから買った。

ボディバッグで、それをおなか側に持ってきて、茶封筒はその中でチャックできるポケットへと入れる。

「ああ、気をつけてな」

彼はそう言って手を振って見送ってくれた。

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