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白く遠い故郷への旅路 第十九話

「おらよっと、セシリアのナイトさまのご到着っと」

「よぉ、イズミ、間に合ったじゃねェか」


 ベルカとストレルカはうまく飛び込めた俺の腕を掴み車内に放り投げ、風で重くなったドアを力強く閉めた。


 座席に放り込まれてひっくり返っていた俺は右手だけ挙げて二人に「どうも」と返事をした。そこへセシリアとアニエスが駆け寄って抱きついてきた。

 二人にはだいぶ不安な思いをさせてしまったようだ。


「空を飛ぶって感覚は意外と普通なモンだな。もっとキ○タマがふわつくと思ってたぜ」とベルカは手についた砂埃を叩きながらそう言った。


「強いねぇ、ブルゼイのガキどもは」


 エルメンガルトが突然現れたかのように笑いだした。レアと騒ぎの間はまるでこの場にいなかったような沈黙ぶりを見せていたので、少しばかり驚いて締まった。


「私はブルゼイへの探究心による興奮状態でなければ今頃ゲボまみれになってたね」


「ばーさん、アンタも大概だぜ。あぶねぇっつったのに付いてくる辺りな」


 ベルカが座席の肩に手を置いて笑いかけると、エルメンガルトは「私を誰だと思ってるんだい」と彼を睨んだ。


「あぁあぁ、分かってるよ。うっせーな」と睨まれたベルカは片眉を上げて後頭部を擦った。


「ヤベェのが出てきたら車ン中から一歩も出ないで鳴りを潜めてたのは褒めるぜ」


「こんな知識しか無いクソババは、戦いじゃ邪魔にしかならんよ。黙り込んで他人のふりして、自分の身だけを守ってた方がマシさね」


 エルメンガルトは腕を組むと、座席に深く座り背もたれに身体を預けた。

 ベルカは肩を上げて口を曲げて俺を見てきた。先生はこういう人だが、これで優しい人なんだ。苦笑いをしてなだめた。


「それにしても、あの頑固でまさにスヴェンニーの代名詞みたいなヤツがまさか商会の内通者だとはな。いったいどれくらい情報が商会に流れたんだ?」


「いや、どれだけ情報流れようとも構わないようになってたはずだ。何せもともと共同で黄金を探してたわけだからな」


 はァとストレルカが釈然としない様に小さく頷いたあと「ところでよォ」と尋ねてきた。


「お前と商会のちびっ子が話してたことがイマイチなんだが」


 こいつらは商会と北公とのやりとりを知らない。ベルカも困ったような顔をして俺を見ている。


「北公が今独立戦争してるのは知ってるよな?」


 北公には錬金術が得意なスヴェンニーが多く、その反面魔法使いが多くない。威力の強い魔法が使える魔法使いの数も限られてくるのだ。

 攻撃手段としては錬金術よりも魔法の方が圧倒的に有効であるので、今回の独立戦争での北公側の主力武器はアスプルンド零年式二十二口径魔力雷管式小銃となっている。


 銃などで魔法使いに太刀打ちできるものかと疑問に思うかもしれない。だがそれは従来までのマスケット銃で考えているからだ。

 アスプルンド零年式二十二口径魔力雷管式小銃は全く新しい物だ。


 雷管式といって、魔法の力を使って火薬を燃焼させて銃弾を発射する仕組みだ。

(魔法そのものを撃ち出す魔法射出式銃や魔法の力のみで弾を撃ち出す魔力射出式銃というのもあるが、そういうのがあると言うことだけ伝えて、長くなるので言わなかった)。


 火薬を必要とするのはマスケット銃と同じだが、大きく違うところがある。それは、銃身のライフリング、弾薬の構造や火薬の種類などを改良したことで、弾丸を狙ったところへ狂い無く正確に打ち込める点だ。

 それによりマスケット銃などの従来のもののような音での威嚇や運良く当たれば良いというものから、確実な殺傷を導くようになった。


 もう少し具体的な仕組みを説明すれば、銃内部に組み込まれている魔石が引き金を引くことで作動し、そこから発生した魔法により実包の薬莢底部にあるプライマーを点火する。

 その爆発力で弾丸を撃ち出す銃だ。


 その銃の威力は絶大で、魔法使いでない者でさえその銃を持てば魔法使いと同等に渡り合えるほどの力を持つことが出来る。

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