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黄金蠱毒 第百十八話

 例えば、非常に大雑把な例えになるが、軽い金属に強度を持たせることも可能だ。

 一見すればとても万能な金属加工法にも聞こえるが、実はそうでもない。

 移したい金属の性質を持つ金属が必要不可欠だったり、相反する性質、例えば熱伝導性が非常に高いが保温性に優れる性質を同時に持つのは困難だったりと制限も少なくない。

 しかし、仮に必要になった場合でも、それらは合金にしてしまえばある程度は解決できる。


 よって、それよりも憂慮すべきは金属全体に均等に性質を与えるには、金属全体に等しく魔力をかけなければいけない点なのだ。

 均等にかけるためにはある程度薄い方が良いため、形状も限定される場合が少なくない。


「だが、魔力超伝導性を有するブルゼニウムを応用すれば難易度はだいぶ下げられるが、……おっと」と黙り込むと視線を上に向けた。


「これ以上は言えないかな。でも、君なら察しがつくんじゃないかい?」


 そこまでは饒舌だったが、突然思わせぶりに話を止めて、覗き込み試すような顔をしてきた。

 だが俺は「いや、わからん。さっぱりだ」とほとんど何も考えずに即答してしまった。


「じゃあヒントだ。金はどんな性質を持つかい?」


 オージーは今度はクイズを出してきたのだ。


「魔力絶対絶縁性。魔力超伝導性を有するブルゼニウムとは対になる性質だろ?」


「その通り」と深く頷くと「では、それを踏まえた上で、ヒューリライネン法を適用するには魔力を金属にどうしなければいけないかい?」と再び質問を重ねてきた。


 繰り返しになるが、ヒューリライネン法は金属に魔力を均等にかけて特定の性質を付加ないし除去する方法だ。

 ということは、魔法がかからないところは元の金属の性質を残したままになってしまう。


 そして、金は魔力絶縁性があり、魔法を通さない。

 不純物が混じる金は不純物を通じて僅かに魔力伝導性を有するが、魔力をかけていくうちに抵抗で生じた熱などで不純物が排除されていく。

 溶融温度が、金の溶融温度である一千六十四度より低いものは固体状態以外で溶出し、それよりも高いものは固体状態のままで周囲の金を解かして沈む、もしくは浮かび上がる。

 どちらかで不純物が排除され金の純度が一定以上になると、金内部の不純物同士の距離が魔力相互作用を及ぼすものよりも遠くなり、魔力は表面に付いたゴミなどを迂回し始めるので、金内部には一切通じなくなる。


 金は行う実験内容によって異なる必要な純度で分けられていて、それぞれに純度が補償されている。

 高純度の金ともなれば九十九パーセント以上の純度であり、ヒューリライネン法で用いた場合には魔力を表面の僅かな汚れに逃がしてしまう。

 つまり、内部に魔力は一切届かない。


――まさか。


 はっとして息をのむよりも先に脇の下が冷たくなり、冷や汗が吹き出るような感覚に襲われた。

 見えていたラド・デル・マルの色鮮やかな景色から、突然色が無くなったような気がした。


 唐突に理解した様子を見せたことに気がついたのか、「気づいたようだね」とオージーは背筋を伸ばした。

 だが俺は、その先にある、ここへ来ることになった原因への更なる疑惑を見いだしてしまった。

 それも疑惑というよりも、ほぼ確信に近いものだ。

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