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黄金蠱毒 第百八話

「乗り気なようでありがとよ。うれしいぜ。

 だが、とりあえずその物騒な杖をおろしちゃぁくれねぇか?

 向けられてると気が散って話が出来ねぇ。オレぁ先端恐怖症でな」


 俺は指摘されて、まだ自分が杖を掲げて先端を真っ直ぐ二人に向けており、ポータルを開くスタンバイ状態のままだったことに気がついた。

 魔方陣を解除し腰に仕舞うと二人は深く頷いた。


「達者といえば、まぁ。

 日常会話なら族同士が集まれば暗号的に使ってる。読み書きは怪しいが、わけの分からん単語でなければ問題ない。

 ちなみに、字をすらすらとは書けねェが計算は頭ン中で出来るぜ。そうすりゃ騙くらかそうとしたヤツァその場でブチ殺せるからな。

 だが、白い山の歌(ヘスカティースニャ)のブルゼイ語は古代のものだぜ。

 言葉もスラングも時代と共に変わるからな。確実じゃねェかもしれねェな」


「それで充分だ。単語自体が全く逆の意味になることは希だろうしな」


 二人が歩み寄るためにこちらに右足を出そうとするよりも先に、俺は二人に向かって歩き出し二メートルほど手前まで進んだ。もちろんセシリアを抱き上げたままだ。

 二人はいきなり近づかれたことに驚いたようで身体が強ばったが、こちらに攻撃の意思が完全に無くなったことを悟りすぐに力を抜いた。

 俺は「じゃ早速やるぞ。まずお前らの歌を教えろ」と顎を動かして催促した。


 するとストレルカが右手を小さく前に突き出すと「待て待て」と止め、それにベルカは「ここじゃちょっと目立ちすぎだろ。誰が見てるか分からねぇよ」と辺りを見回した。


 確かに言うとおりだ。

 俺は相変わらず目に見える脅威には警戒するが、それで手一杯になり、見えていない脅威に対して無警戒になる。

 このやりとりもおそらく誰かが見ている。分かるわけもないが、視線だけを左右に動かし辺りの気配を探ってみた。

 俺は咄嗟に杖を抜き取り、移動魔法を唱えた。そして、二人組の背後にポータルを開いてウィンクをして合図を送った。

「そこで待ってろや!」と言いながら二人にアニエスとタックルをお見舞いしてポータルの中へ押し込んだ。


 二人は突然杖を抜いたことに警戒をしたが、俺のウィンクを見ると表情を緩めた。

 そして、「ふざけんな! 覚えてろよ!」とわざとらしい大声を上げると、当たらないタックルを喰らったふりをしてバックステップでポータルの中に放り込まれているような仕草を見せた。


 そして、二人がポータルに飲み込まれて見えなくなったところで閉じた。

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