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黄金蠱毒 第百六話

「アンタらの目的は色々複雑みてェだが、黄金であって黄金じゃないんだろ?

 アタシらの知ってることを特別にアンタらだけに提供してやンよ。

 それで見つけろ。いや、見つけンぞ」


「そういうこった。オレたちゃ早いとこカネが欲しい。

 贅沢してぇんだよ。人並みにメシが食えるって贅沢をよぉ。だから、手伝いに来たんだよ」


 ベルカはストレルカの横に出ると言い切った。それにストレルカも腕を組みながらうんうんと頷いている。

 そして、俺はやっとこの二人が黄金探しに協力すると言ったことを理解できた。


「その言い方じゃ一緒に探してくれるようだが、それにしてもがめつい奴らだな」


「結構、結構」とベルカは笑い、「オレたちは生きなきゃいけないんだ。アンタがこの間言った、“両親の思い”とやらにこれからも応えなきゃいけないんでね」と仕方なそうな顔をした。


 ストレルカも


「悪事を働いてでも親の期待に応えなきゃいけねェアタシらに、アンタは悪事を働くなって言ったんだ。

 何にも知らねェクセに吹きやがってと腐りてェとこだが、とっとと見つけてまとまったカネが手に入りゃ、それも何とかなるだろさ。

 だが、カネを用意してくれるのを待ってるなンざ、無責任もいいとこだろ?

 カネはお空から降ってくるもんじゃねェ。ンなら、アタシらも混ぜろや」


 と続けた。

 これまでの長い貧困故なのか、生活の糧を得る為に貪欲な二人の言葉は力強く、押されてしまうほどだった。


「それは感心。だが、セシリアはまだ歌を思い出していない。現時点でのラジオ以外の歌詞は不明。

 最近じゃちょっとした揉め事があって、ようやく手に入った情報がごっそり無くなった。

 ほとんど振り出しに戻ったようなもんだ。そんなとこに、あんたらが来て何が出来るんだ?」


 俺がそう言うと二人は両眉を上げて顎を突き出し瞬きを数回繰り返した。

 そして、ベルカは両手を突き出して肩を上げてストレルカの方を見た。ストレルカはそれに答えるように小首をかしげた。

 ベルカは後頭部に手を置き、擦るような仕草を見せ、「オイオイ、ナメてもらっちゃ困るぜ」と言いながら困ったような表情で左右を見た。

「この間オレたちのアドバンテージは何かっていったよな? もう一遍言ってみろよ」と試すような顔になった。


「ブルゼイ族であることだろ?」

 それ以外には言っていない。しかし、それ以上にいったい何の意味があるのだろうか。


「そう。オレたちゃ黄金の正統なる継承者、ブルゼイ族だぜ?

 じゃあ、これは知ってるか? 白い山の歌(ヘスカティースニャ)がブルゼイ族の口伝だってのは、どうだ?」


「お前ら全員、誰一人にも教えてないが、アタシらは“白い山の歌(ヘスカティースニャ)”を知っている。それもオリジナルのブルゼイ語でな」


 まさか、と思うよりも早く、ストレルカが付け加えた。

 ベルカの言葉に被せるように話を続けたストレルカはこの間返したブローチをいじっている。

 爪の間まで土だらけの右手の人差し指と親指に摘ままれたそれは動くと、黄色い光をちらちらと返した。


「期待させて悪ィが、全部じゃあ無い。

 この間、キューディラジオとか言うので流れてる曲を聴いたんだ。お前がアタシらをノルデンヴィズのカフェに飛ばしたときにそこで流れてたんだぜ。

 北公さんのおごりのコーヒーすすりながらゆっくり聴けたから、前にどっかで聴いたときよりもキチンと聞けたんだ。

 だが、どうも聞き覚えが無くてね。それがアタシらの知らない歌詞だったからさ。

 アタシらはガキの頃、白い山の歌(ヘスカティースニャ)は途切れ途切れで伝わってるって育ての親から何度も聞かされた。

 そして、それはブルゼイ族をつなげる歌だから覚えろってな」


「つまり、そのプリャマーフカの歌、オレらの知る歌、そして、世間で流れてるヤツとをつなぎ合わせればいいんじゃねぇかってことだ。

 おそらくそれでも全部では無いだろうがな。でもよ、人材だけ集まって殴り合いの馬鹿騒ぎしてるよりはよっぽど進展があるだろ」

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