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黄金蠱毒 第九十五話

「自由を与えたのは、恩着せでも何でも無い。

 ただ、ちょろちょろ出てきて邪魔する理由が知りたくて、運良く捕まってたから聞いてみたらお前らの目的が俺には都合が良かっただけだ。

 恩着せにしてほしいなら、生傷の絶えないお前らに治癒魔法もかけて全快にやるよ。

 拘束時の処置なんてのは応急なだけでまだ痛むはずだ。ウィンストンさんの蹴りも強烈だろうに。

 そういえば、ユリナに喰らったのはもう治ったのか? 魔石を渡しておいたはずだが」


 杖を持ち上げて二人に治癒魔法をかけた。

 ベルカは引いていく痛みに全身を確かめるように首を回すと、「バカでチクショウか……。オマケに甘ちゃんときたもんだ」とへへっと笑った。


「だが、なァ、ベルカ。このバカ話、悪い話でもないと思わねェか?

 アタシら根無し草には誰がどこで潰し合おうが知ったこっちゃない。

 こいつは面倒な黄金は探し出してくれるわ、さらに全部くれるわ、良いことばかりじゃないかい」


 ストレルカはだいぶダメージが残っていたのか、強めにかけてやっと腫れが引き、動くようになった足を上げ、足首を回した。

 全快になっていくストレルカの様子を見ると、ベルカは腕を組むと舌打ちをして膝をかたかた動かした。

 ウィンストンの先ほどの提案とは根本的には異なるものの、していることは近い物がある俺の考えにのることに対する抵抗がある様子だった。

 だが、膝を弾くように叩くと「わぁったよ。邪魔はしねぇ」と意外にもあっさりと了承してくれた。


「納得してくれてありがとう。あんたら、実は悪い奴じゃないだろ」


「さぁな、根が悪ぃかどうかはもう忘れたぜ。生きる為に悪事を働いてんだから」とベルカは拗ねたような顔になった。

 略奪などを楽しむような根本的に悪ではなく、むしろ足が洗えるならというのが垣間見えた。


「さて、納得してくれたところ悪いんだが、先に伝えておくことがある。もし、黄金がなかったらどうする?」


 ベルカは「お前ら、従わせといて隠す気マンマンかよ」と下顎を突き出ししゃくりあげるように睨め付けてきた。

 曖昧な現状を先に伝えた方が良かったかもしれないが、それはそれでややこしくなる。

 この二人は黄金を存在する物だと信じて動いているので、出し抜く気だろうとか言われてしまうかもしれないのだ。


「申し訳ないが、駆け引き云々の話じゃない。あんたらが納得してくれてから一歩先の話なんだよ。

 今んとこな、黄金が財宝なのか、金鉱石なのか、はたまた別の形であるのかすらはっきりしてないんだよ。

 実は黄金があるって言葉に俺たちもお前らも踊らされてるだけで、最悪何にも無いかもしれないってことも覚悟して貰わないと」


「ンなこと言って、情報は掴んでんだろ? なんせ独り占め予定だもんなぁ」


 ストレルカがひねた顔でつぶやいた後、顎を高く上げて見下ろしてきた。

 だが、視線に威嚇は無く、睨むと言うよりも詰問するような眼差しは俺の返答の真偽を探るつもりなのだろう。

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