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黄金蠱毒 第六十話

 殺気を放つストレルカの言葉を押し退けて、なおも二人に怒り肩を上げてのしのしと向かっていった。


 この男、シバサキのすごいところは、殺気を放つ相手のテリトリーや間合いの中に土足でずかずかと容赦なく入り込めるところなのだ。

 彼も長年戦いに身を投じていた身であり、それが如何に危険なのかは十分知っているはずだ。

 自分のペースに持ち込む為にリスクを承知した上であえて入り込んでいるのか、それとも本当にただ何も考えていないだけなのか、とにかくこういうところはすごいとしか思えない。


 シバサキは不死身という特殊な体質だ。それ故に死を恐れていない。

 というよりも、死を理解していたとしても自らの身をもって経験をしたことはなく、身に迫る死と言う概念を他人事としか理解していない。

 そして、一般的に死ぬことへは恐怖を抱き、逆に死ぬことが出来ないという状態にも恐怖を抱くはずだが、彼にはそれさえもない。


 少なくとも仲間だった頃はまだ不死身ではなかった。身体がそうなったのはおそらくごく最近だろう。

 だが、そのような特異な身体になる以前からこの特性は持っていた。


 与えられたチートやこちらに来て身につけたスキルではなく、持って生まれた才能なのだ。


 しかし、どちらも単独だけでは彼をそのように選ばれし者たらしめることはできない。

 与えられた不死というチートと自らの天性の無鉄砲さが二つ揃うことで凄まじい相乗効果を発揮し、ある意味でシバサキを選ばれし者たらしめている。


 いきなりテリトリーを侵害された二人は動揺を見せ、ベルカはシャシュカを抜こうと柄に手をかけ、ストレルカは背中の鎌に手を伸ばした。


 シバサキは立ち止まると仁王立ちになり、

「僕たちのしていることは民間人の関わって良い単純なことじゃないぞ! さっさと出て行ってくれ!」

 と腰に左手を当て、右手の人差し指でそれぞれに二人を指さしながら睨め付けた。


 二人は僅かに攻撃の意思を弱め、踏み込もうと込めていた力を抜きそれぞれ武器から手をゆっくりと放した。

 しかし、顔の目の前に人差し指をちらつかせるシバサキの仕草がストレルカにとって癪に障るものだったようだ。彼女はムッとしたような顔になると、武器から離れていた拳を強く握り始めた。


 だが、ベルカはそれを止めてストレルカに顎を動かして見せ何か目配せをした後、身体を傾けてシバサキの陰から俺とムーバリを困ったように見つめてきた。


「あー……、わりぃ。オレたちゃ険悪な間柄なのはわかってるが、ひとまずこのオッサンはいったい何モンだ?

 イズミでも上佐殿でもいいんだが、とりあえず紹介してくれないか?

 ここにいるってこたぁ、一応黄金関連なんだろ? あと、あの後ろの方で腕組んでる奴らも見たことないんだが」


 だが、シバサキは「コラ、無視するな!」とベルカに合わせるように身体を傾けてベルカの視界を遮った。

 そして、む、と声を上げてこちらへ振り向くと、

「待て、何でこいつらが黄金について知っているんだ!

 イズミか! お前か! まーたお前か! 余計なコトしやがって!

 知り合いだからって、黄金があること自慢げにべらべらべらべら喋ったのか!」

 と俺とムーバリを見て怒鳴り声を上げた。


 シバサキの向かいにいるストレルカが怒鳴り声に首を下げて顔をしかめている。

 だが、敵から無警戒に視線を逸らすシバサキの力量を見定めたのか、二人はさらに力を抜いた。


「なぁ、オッサン、さっきから怒鳴ってばっかだな。ちったァ黙れないのかい? アタシの耳がイカレちまうよ」


「どうやら黄金探しであってるようだな。オレらのモンなのによぉ。

 イズミは知り合いだが、オレらが探し始めてから知り合ったんだよ。

 どういう関係だか知らねぇが、自分の中だけで正論だと思ってること怒鳴るだけじゃ誰もついてこねぇぞ」


 そして、呆れかえるような表情になった。

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