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強欲な取引 第十五話

「聞いた話じゃ、さっきイズミたちが基地に顔を出してった後に例のでかいトンボがまた来たそうだ。何故か知らんけど、はなっから攻撃的だったそうだ。

 そいつを追っ払おうと撃ってるときに共和国軍の、あ、先史遺構調査財団の撃った弾がたまたま行動中だった連盟政府の……バン、バンダー……ナンタラカンタラ部隊の方へ飛んできたらしい。

 私らの拠点の近くまで来てこそこそ何してたんだかな、気持ち悪ぃ。まぁいい。雑魚に用はねぇ。

 うっかり飛んでった流れ弾に魔法使いさんたち怒っちゃって、どさくさ紛れの攻撃だとかイチャモン付けて魔法ぶっ放してきたんだってさ。

 現場の判断で反撃してるそうだ。キューディラ越しにも爆音聞こえるから、今まさに戦闘状態らしい。はっはっは!」


 腕を下ろしたユリナさんのキューディラからかすれた音が聞こえてくるのだ。

 人が話すときの声ではなく明らかに何かの爆発する音、それに続いて聞こえる人々の怒号。全てが大きくキューディラが拾いきれていない音は割れている。

 どうやら撃ち合いが始まったのは嘘ではないようだ。


「指揮官のあなたが行かなくて良いのですか?」


「ケツにタマも喰らわせられない連盟政府のブランダーバスの兵隊さんと湯沸かしで精一杯なチンカスメイジどもに私の部下が負けるわけがない。

 私らの銃は平均的な広射程魔法の三倍の射程距離あるんだぜ? うちと張り合うなら全員が私レベルでなきゃなぁ。

 突撃ラッパとショボい花火はチッタカタッタの軍楽隊だけにしとけよ」


「なら私が行きます。止めてきます。私たち商会は連盟側の依頼で動いているので」


 連盟政府と共和国軍での明確な戦闘が起きてしまったのは非常に芳しくない。今すぐにでも止めなければいけない。

 だが、戦闘を止めることを理由にこの場から逃げられるというのは良い機会だ。


 ユリナさんも止めに行かなければ今後まずいことになりかねないというのは分かっているはずだ。

 連盟政府と立場は隠しているが共和国の軍勢が戦いを始めたとなると、連盟政府とエルフの全面戦争に発展しかねない。

 まだ私たち商会の最大の顧客である連盟政府が、新たな顧客を獲得する前に完全に潰されてしまう。


 先ほど背負いかけて鞄のストラップに身体を飛び込ませるように背負い、これ見よがしに急ぐふりをした。

 和平の為には仕方ないという意思でもあるかのように見せつけて、ユリナさんを無視して部屋を出て行こうとした。


「おっと、待ちなよ。たかだか派遣されただけの一商人のお前さんに止める権限はあるのか?」


 ユリナさんはソファの前に立ち、左下を向きながら膝裏のスカートを押さえてゆっくりと屈みソファに深く腰を下ろした。

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