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白狼と猟犬 第六十八話

 太陽は登り切っていたが、なかなか沈まない。

 早雪、噴火、災害続きで奪われている短い日差しに感謝するはずの冬だが、このときほど早く沈んで欲しいと思ったことはない。


 長期戦には覚悟していた。

 軍属時代にも森林官時代にも、ほとんどの狙撃の度に長期戦だったので慣れてはいた。しかし、そのときは的の位置もはっきりしていることがほとんどで、信頼できる素晴らしい観測手もいた。


 今はそのどちらもない。

 自らの目と耳と経験だけを頼りに姿の見えぬ的を探り、そして自らの判断で引き金を握らなければならない。


 私が煙突の裏で死の恐怖を抑え込んでいる一方で、ポルッカは私がどこにいるかをはっきりと捉え、集中力を欠いた私が物陰から頭をひょっこり出してしまうチャンスを待っているのだろう。


 些か分が悪すぎる。ならばここは逃げることに徹し、次回のチャンスを設けたいところだ。


 だが、生憎私が陣を取った煙突は大きくはなく、逃げることに徹するには身動きが取れないのだ。

 廃屋だと思っていたが、どうやらこの家には住民がいるらしいのだ。横に見えている庭で干してあるシーツがはためいているを見落としていたのだ。下手に動けば住民が巻き込まれてしまう。


 煙突に頭をつけ、空を見上げた。色々と考え込んだが、まだ一分も経っていないようだ。


 もしかすると挑発に乗ってしまったのは私の方なのではないだろうか。


 どうやって見つけ出せば良いか。実際に撃たせてしまえば、相手の場所など筒抜けに出来る。しかし、その一発で私が撃たれてしまっては元も子もない。

 わざとひょっこり頭を出してすぐに引っ込めて、撃ってきた相手が偶然にも外してくれる。だが、それこそ思うつぼだ。そんなのは運任せだ。スナイパーのすることではない。


 私がどれほど分が悪くなろうとも、確信していることがある。それはチャンスはいずれ訪れるということだ。

 それが再起を覗うための逃げ出すチャンスか、それともポルッカの場所を探り出すことに成功し機先を制するチャンスか、はたまたそれ以外か、どれかはわからない。


 私にとってどれでもいいのだ。

 チャンスとしての考えられる選択肢を増やし、目の前に訪れたいずれかを掴めばチャンスを逃すと言うことは百パーセントなくなる。

 そうなればもはや先行きがぼんやりとしているだけのチャンスなどではなく、結果をある程度はっきりと思い描くことの出来る予想となるのだ。


 私は途切れることなくその形の分からない機を覗うことにして、大きく息を吸い込み肺の中に溜め込んで目をつぶった。

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