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白狼と猟犬 第六十三話

「珍しい銃を持っておりますな。凶悪な白オオカミの猟でもされるのかな?」


「寝ぼけてんじゃないよ。銃ならいつも持ってるじゃないか。こいつは借りモンだよ」


 ウィンストンは私の背中で装備に当たり音を立てるアスプルンド零年式二十二口径魔力雷管式小銃をなめるように見ながら、さも何かを知っているかのような尋ね方をしてきた。

 こいつは昔からそうなのだ。知っているかのように物事を饒舌に語るが、実は何も知らなかったと言うことは何度か、いやほとんどそうだった。


「その銃そのものが珍しいのですぞ。見たことがない造りだが、どうやら雷管式のようだ。触るなと言われている私でもさすがにわかるぞ。

 “殺さぬ猟犬”である君が殺傷力の高い魔力雷管式とはどういう風の吹き回しかね? だが、その様子ではどこかの部隊の育成は順調そうですな、はっはっは」


「まぁ、あながち間違っちゃいないね」


 上機嫌に笑うウィンストンと共に無人エリアの外縁部にある特に朽ちた廃屋群を抜け、かつてその辺りのメインストリートだったであろう馬車が対向できそうなほどに開けた場所に出たときだ。

 前腕部を何かが這うような、細い糸が皮膚の僅か上を通り抜けていき産毛を撫でていくような、これまで何度か味わったことのある感覚があった。


 それは間違いなくあの“糸”の感じだ。


 私が再び路地の陰の中に回り込むようにして隠れると、右前を歩いていたウィンストンは振り向き何事かと両眉を上げて私を見て怪訝な顔をした。


「どうしたのかね? まるで狙撃される兵士のような動きをして」


「ウィンストン、先に行きな。私は用事が出来たようだ」


 しばらく黙って見つめてきた後、ほう、と鼻を鳴らした。


「狙われたのですな。いやはや、私に先に行けとは、君はいつも酷いですな。撃たれたらどうするのかね」


「黙んな、金剛石頭。あんたの頭をぶち抜ける銃はテスト前の魔法射出式銃ぐらいなもんだよ。だが、安心しな。あんたは狙われない。これは間違いなく私に向けられたものだよ」


「やれやれ、単独行動とは奥方に始末書ですな」とウィンストンは鼻から息を漏らした。だが、何かを思い出したかのように、ん、と唸ると掌を叩いた後、後頭部を押さえた。


「ああ、これは失念した。君は休暇中だったな。私はエルメンガルト殿のところに向かっておりますぞ。

 君が持っている銃はチャリントン製の銃でもないし、いつもの魔法射出式銃じゃない。気をつけてバカンスを楽しみたまえ」

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