白狼と猟犬 第五十二話
そばかす女と堅物男は両サイドから取り囲む様に立ち、前屈みになり左足を前に出して腰につけた杖に手をかけている。その一方で、ポルッカは入口側の壁により掛かり我関せずと腕を組んで目をつぶっている。
左右をチラチラと見回すと構えている二人と目が合った。二人とも視線が合うと同時にぴくついた。
「なぁ、落ち着いて話がしたいんだが、こいつら何とかならないのかい? 私は魔法が使えないんだよ。魔法使いってのは無抵抗だろうが誰彼構わずブッ放すのはよく知ってるが」
「これは失礼致しました。お茶でもどうですか? ノルデンヴィズからの補給が先日あって、贅沢にも紅茶が少々手に入りましてね。この辺りの飲み方で、コケモモのジャムでもたっぷり入れましょう」
「ありがたいが止めておくよ」
「そうですか。三人とも、一度下がりなさい。この人はただ話しに来ているだけなのですよ」
「いや、いさせろ。下ろすのは武器だけで、このままその場にとどめさせろ。あんた一人で済む話じゃないんでね」
ムーバリは三人に出て行くように目配せをしたが、私は右手を前に出してそれを制止した。出て行こうとした男と女は気まずそうに立ち止まり、再び持ち場についた。
ポルッカは苛つきだしたのか、左足を揺らし始めた。貧乏揺すりに合わせ、左腰の杖が壁にぶつかりコツコツと小さな音を周期的に立てている。
私は左右を見て、二人が武器を上げずにいるのを確かめると頷き、早速本題に入った。
「さっきだが、うちの調査団の隊長のュリナ様が襲われた」
ムーバリは表情を変えなかった。
少しは揺さぶりになるかと思ったが、さすがに諜報部員だ。動揺を顔だけでなく全身のどこからもこぼさずに「それがどうかなさったのですか?」と穏やかに尋ねてきた。
「誰に襲われたかわからないんでね。誰だか分からないってことは、黄金探しに来てる全員が容疑者ってことになる。で、ちょっとばかしお話を聴きに来たのさ」
「そうですか。それは大変でしたね。お力になれると良いのですが。もう少しお話を伺えますか?」
「珍しい武器で攻撃されたんだよ。金属の弾が飛んできた」
「ほう、それは珍しいですね。それはどのようなものですか?」
ムーバリの徴発しているかのような繰り返しの質問にいらつき始めてしまった。
セシリアが撃たれたとき、こいつは共和国の軍服を着てモンタンのツラをしていた。だが、今は北公のムーバリだ。立場がややこしくなっているのは分かるが、些か腹が立つ。
「武器そのものは見ていないんだよ。いったいどんな武器なのか、想像も付かないね」
「未知の武器ですか。それは恐ろしいですね。私たちも気をつけなければなりませんね。ですが、お話に具体性がありませんね。それそのもの、例えばその金属片などがないと私たちも分かりかねますよ。残念ですが……」
「じゃこいつは何だ?」
 




