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白狼と猟犬 第五十一話

 薄い太陽を真上に私は単身、北公の拠点に向かった。報告会の行われる酒場廃屋を通り過ぎ、二階建ての宿の廃屋を訪ねた。


 建ち並び崩れ方以外に違いのない廃屋でどれが北公の拠点となっている廃屋なのかわからないかと思っていたが、その中に明らかに様相の違う物が一つあった。

 窓はボロボロだが開閉の際に払われるので蜘蛛の巣は張っておらず、動くことで埃が落ち続けるので比較的に綺麗な状態になるドアのついた建物があった。

 そういった人が使うと出る生活の温かみがある二階建ての建物は目立つのですぐに分かった。

 ノブ周りに土埃の付いていないドアをノックするとしばらく無言が続いた後、そばかす顔の茶髪の女がわずかに開けられたドアの隙間から上目遣いの顔を覗かせた。


「どちら様でしょうか……?」


「先史遺構調査財団のジュリアってんだが、おたくの一番偉い人に合わせて貰えないかい?」


「す、すぐには厳しいですよ。連携中とは言え、あなたは一応北公と目下敵対中の連盟政府の人間なのですから」


 そうさな。私は今、人間で連盟政府の先史遺構調査財団の調査員。もしここで実は共和国のエルフだなんて言ったらこの女は卒倒するだろう。

 飛び上がって驚く様を想像して鼻で笑っていると、奥から声がした。


「やれやれ、毎度毎度ここへ訪れる人は単身で乗り込んでくる。北公はなめられたものですね。ユカライネン下尉、その方を通して差し上げなさい」


 そういうと、ユカライネン下尉と呼ばれたそばかす女はドアを開けて私を中へと導いた。廃宿のラウンジのようなところへ入ると同時に、そばかす女はすぐさま私の真横二メートルほどに移動した。

 彼女の反対側を見ると、デカい堅物そうな男が私を中心に対称の位置で立ち、こちらを見下ろしている。やれやれ、堅物デカ男はウィンストンだけで充分だ。

 取り囲む様にいるということは、二人は何が起きても対応できる配置に就いたのだろう。


「邪魔するよ、北公軍ムーバリ・ヒュランデル上佐。あんた確かここでは一番偉いんだったな」


「連盟政府、先史遺構調査財団の調査員にして戦闘員のジュリア・オブリンさんでしたね。ようこそ、北公軍クライナ・シーニャトチカ拠点へ。私たちに何か御用ですか」


 お互いに素性を知っていながらしらばっくれて、わざわざここで名乗るべき立場と名前を確認するかのように言い合った。


 実に面倒くさい。昔の私ならやらずにトラブル発生だったろうに。

 だが、いつまでもガキのままではいけない。三文芝居はしなければいけない。

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