白狼と猟犬 第三十四話
悔しいのを承知でそれから何度かウィンストンにもう一度銃の仕組みに付いて説明しろと迫った。すると飽きもせず毎回不愉快なまでに丁寧な魔法射出式銃の説明をしてきた。
銃身内部のらせん状に張られた金元素の魔力絶縁体により魔法は回転するように進み、ジャイロ効果が生まれ狂い無く真っ直ぐ飛ぶようになる。
同じことを繰り返し言っていること以外は、相変わらず何を言ってるのかわからなかった。
だが、単純に考えることにした。
正しく真っ直ぐ狙えているのは私自身ではなく、銃が正しく真っ直ぐ飛ばしているという可能性を受け容れた。そこで、フリントロック式のときにはやったことが一度もなかった座射で魔法射出式銃を撃ってみたところ、的の左側に当てることが出来た。つまり、狙いは以前よりもやや正確になったのだ。
そのときになってフリントロック式で骨の髄まで染みこんだクセが邪魔になり、かえって当てられなかったことに気がついたんだ。
フリントロック式は反動が大きい。引き金を握ればすぐに弾が飛んでいくわけではない。引き金を握るとフリントが倒れ、フリズンの表面を走り火花を起こす。その火花を閉じ込めて装薬を発火させて弾を撃ち出す。
問題は発火の際の衝撃だ。銃をどのように持ったとしても、銃の銃身よりも内側で炸裂すれば銃身は持ち上がり、バットは下がる。それをどこかのタイミングで補正しているのだ。
しかし、繰り返し撃つことで付けていった癖は身体で掴んでいたので無意識なものであり、自分がどのような補正をいつかけていたのかはっきりとはわからなかった。
それから悔しくて、雨の日も風の日も夢中で練習した。
“魔弾のジル”と呼ばれていたのが悔しくなったね。このままでは私は本当に悪魔に頼らなければいけない。名実ともに“ジル・フライシュッツ”になっちまうところだった。
しかし、凝り固まった癖ってのはなかなか治すことが出来なかった。
まずフリントロックで無意識にしていた癖を見つけるところから始まったんだ。銃を撃つ目的が、標的を撃つことから引き金を握るまでに変わっちまった。スコープに髪の毛で十字を付けて何度も撃ちまくった。それでもすぐに見つけることは出来なかったんだ。
だが、ある月蝕の夜にとうとう気がついたのさ。当てられないことに苛立ちが募り、気分転換に久しぶりにフリントロック式銃を撃った直後に魔法射出式銃を撃ったら肩をつっちまったんだ。
フリントロック式で使う筋肉を魔法射出式銃では使わない。それで変な力がかかったまま撃ったからつったんだと。
そして、それにより補正をいつ、どの程度かけていたのかを理解したんだ。




