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白狼と猟犬 第二十話

 その採用試験では新型の銃が使用される。


 フリントロック式銃最大手メーカーのヴルムタール社が新たに開発した最新式で、これまでのように金属の弾を撃ち出す物ではなく、魔法そのものを射出するものらしい。名前はまだ付けられていないが、性能のままで付けるとすれば“魔法射出式銃”と言うわけだ。


 とある経緯により人間(エノシュ)から流れてくる魔石量の増加の兆しがあり、今後二十年で帝政ルーア内での流通量はその時点での二倍以上になると試算が出た。


 ――というのは表向きの話であり、実際は十倍近くが見込まれているそうだ。民書官公式発表において、二倍に増えた魔石は全て平和的発展のために産業用へと回されると公表されているが、隠されているおよそ八倍分は全て武器に回す予定となっている。それを漏れなく徹底管理するために民書官秘匿号令により魔石を利用した新兵器開発を推進し、企業間で密かに行われた開発コンペの結果、生まれた兵器がそれらしい。


 最新兵器は命中精度が高く、現行のフリントロック式など比較にならないほどの正確な射撃が出来るもので、採用試験はその性能評価テストも兼ねているとのことだ。

 その新型の銃を使い指定された的に七発連続で命中させたら採用となり、栄誉ある採用者には、銃の通称を付ける権利も与えられる。


 性能評価試験なら撃つだけでいいではないか、若干の違和感を覚えて眉間に皺が寄ってしまったが、ウィンストンは私の表情に構わずさらに付け加えた。


「君は弱小だった銃歩兵科を牽引し、君が育て率いた同僚、後輩たちは今では優秀な戦力であり教官になっている。その甲斐もあり、銃歩兵科はもはや貴族のお坊ちゃんの軍属泊付け部隊ではない、誰もが憧れる狭き門構えのエリート部隊となっている。

 それは君が覆そうとしてきた結果なのだ。新しい物は先入観で否定されがちだ。だが、君はその新しい物をさらなる力にする実力を持っている。君は残念だが、立ち止まることは出来ない。一度立ち止まれば崩れるだけだ。

 美しい君に舞台袖は似合わない。どうだね? かつて君が銃歩兵科を鉄火場の一大スターの座にのし上げたときと同じように、この新しき時代の幕間に閉ざされている魔法射出式銃の幕を開けてみたいとは思わないかね?」


 私は黙ってしまった。


 まさかお前の下手くそな射撃のせいで私が銃歩兵科に入ったなどとは言えなかったし、またお前のせいで新たな一歩を踏み出すのが悔しいので、何も言えなかった。


 だが、これで受けなければウィンストンに負けたような気がするのだ。


 それも悔しい。だから、私は受けることにした。渋々ではなく、真正面から。

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