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スプートニクの帰路 第五十八話

 セシリアは帰ってきたが、呼び出してしまった二人に事情を説明するためにそれからもしばらくそこで待っていると、ムーバリが現れ、遅れてフラメッシュ大尉も現れた。

 思った通り二人とも完全武装で現れた。ムーバリは槍を背負い、フラメッシュ大尉に至ってはすでに魔法射出式銃のセーフティを解除して駆け足で現れた。

 おそらく奪還のために戦闘が起こると想定して、共和国の機密であるはずの魔法射出式銃を大っぴらに出しているほどに緊迫していたのだろう。この場にもしクロエがいたら、ユリナたちが民間団体ではなく共和国の手勢であることがバレてしまっただろう。共和国のスパイでもあるムーバリだけでよかった。


 二人は俺の首にしがみついて泣いているセシリアを確認すると、安心したように目を見開いた。


 二人に事情を説明し、次回の集会で全て報告するのでムーバリには残りの三人に、フラメッシュ大尉にはユリナ、ジューリアさんとウィンストンに連絡を頼んで解散にした。




 誘拐未遂以降、セシリアが泣かなくなった。


 だが、それと同時に笑うことも少なくなってしまったのだ。俺は彼女の感情の起伏が全体的に少なくなったように感じた。

 べたべたとくっついて甘えてくるのは相変わらずだったが、何故かそれがこれまでの無邪気な子どもがしてくるような、例えば服の裾をいじったり服の中に潜り込んだりするようなものではなく、ただ離れまいと寂しさを埋めるような仕草に変わってしまったのだ。


 いなくなってクロエが連れてくるまでの間、何があったのだろうか。それから俺はあの数分の出来事を後悔し続けた。


 ククーシュカからセシリアへ時間的に退行させたとき、何歳くらいまで戻したのか俺は把握していない。だが、これまでのセシリアの反応を見る限り、おそらくすでにシバサキとは遭遇していた頃だ。セシリアのシバサキとの面識については、ククーシュカだったときに聞いた程度のことしか知らない。

 かつての彼女――ククーシュカから聞いた話では、シバサキは孤児になってしまったセシリアを助け、母親のクラーラを荼毘に付した。幼いセシリアには生活力が無く、シバサキも子育てなど出来るわけもないので、彼女は孤児院に預けられることになった。その孤児院というのも何やら堅気ではなかった。

 おそらく、今の彼女は母親が死んだ直後から孤児院に行くまでの間の彼女だろう。戻してから共に過ごした日々の中で、無邪気に笑い、ベタベタとひっついて甘えてきた彼女には、孤児院でまだすり切れてしまう前のあどけなさが残っていたからだ。

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