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エレミットとグーリヒア 第二十一話

「そういえば、おい、スヴェルフの上官。お前は純粋なスヴェンニーではないといったな。では、自分がどちらかなど知らないだろう。だが、スヴェンニーであるならば、必ずと言ってもいいほどどちらかに分類されるはずだ」


 ラーヌヤルヴィはユカライネンを押し退けて目の前まで来ると、人差し指を私の胸に突き立てた。そして顎を上げて見下し始めた。


「“どちら”とは?」


 言葉の意味がわからずに眉を寄せて首をかしげてしまった。するとすぐ横で私とラーヌヤルヴィの顔をキョロキョロと見つめていたユカライネンが上目遣いをした後、耳打ちをした。


「神秘派か広啓派かってことですよ」

「ああ、そういうことですか。残念ですが、私はスラム育ち。親の顔も知りません。どちらかなのか、見当も付きませんね」


 ラーヌヤルヴィは鼻で笑うと、小さな声で「ブランバット(敵性混血)め」と囁いた。


「スラムはスラムでも、ラド・デル・マルのスラム育ちらしいな。ならば卑怯者でおなじみの神秘派(エレミット)の一族ではないか? エレミットどもはこそこそと物事を隠す輩が多い。スヴェリアから逃げて流れ着いた先で害虫のように増えたエレミットの子孫である貴様の母親も見知らぬエルフに孕まされて、それを隠すために貴様を捨てたのではないか?」


 ユカライネンはそれを聞くと怒ったように肩を上げて毛を逆立てた。だが、ラーヌヤルヴィは上官であるので強く言い返せず、もぐもぐと口を動かした後、悲しそうに視線を下に落とした。


「げ、下佐、言い過ぎですよ。も、もうそんな時代じゃないんですから。エレミットなんて、そんな下品な言い方も」


 しかしそれでも、ユカライネンはラーヌヤルヴィに気弱に言い返した。

 ウトリオがユカライネンの側に来ると包み込むように肩に手を置き、引き下がらせようと優しく引いた。しかし、ラーヌヤルヴィはウトリオに顎を振り、構うなと指示を出してユカライネンを睨みつけ続けた。


「何を言う。エレミットどもが強欲に隠し立てて、技術を自分たちのためだけに利用しようとした結果、広く知識を啓蒙して太平の世を目指そうとしていた私たち広啓派だけが差別を受けることになったのではないか。ウトリオ上尉、ユカライネン下尉。スヴェリア再建政策という建前の権利縮小政策で自分たちの家がどうなったか、よもや忘れたのではあるまいな?」


 ラーヌヤルヴィの言葉にウトリオもユカライネンもうっと喉を鳴らして首を後ろに下げて黙った。


 このままではラーヌヤルヴィの下佐としての求心力が低下してしまう。同じ佐官としてこれは止めなければ、佐官の地位そのものを落としかねない。

錬金術師の広啓派・神秘派について、『ウロボロスの王冠と翼 第五十一話 第255部分』前後にて解説しています。

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