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エレミットとグーリヒア 第二十話

 ウトリオとユカライネンはベルカとストレルカがいなくなってもしばらく杖を握りしめて警戒していた。落ち着きを取り戻すまでにはそれなりに時間を要し、杖を腰のベルトに戻してからやっと安心したようにため息をついた。

 ラーヌヤルヴィは銃口を見通しの利く通りに向けて、人がいないことを確認した。誰かに向けたまま弾を取り出すほど非常識では無さそうだ。(私には構わず向けて来そうだが)。ロックをかけてゆっくりとボルトを起こして引き丁寧に銃弾を取り出している。さすがにこれは失敗しないか。

 その光景をニコニコと見つめていると、チッと舌打ちをして口角を歪ませた。私の抱くラーヌヤルヴィへの不安が伝わったようだ。よもや失敗するはずもないか。


 辺りを見回すと、廃屋から垂れ下がっているボロ布がはたはたと強く揺れ始めた。足下の砂も流れ、革靴に纏わり付き鳩目とレースロックに入り込んでいる。少し風が強くなり始めたようだ。廃墟を通り抜ける風が悲鳴を上げている。

 ユカライネンが飛んでしまいそうな帽子を押さえながら傍にやってきた。


「ブルゼイ族はなぜスヴェンニーと相容れないのですか? 話には聞いていますが、何故なのかは私は知らないのです。知りもしないのに敵視するのは、ちょっと」


 そう言うと困ったように視線を落として革靴を見た。隙間に入りそうな砂を気にしているのか、つま先をとんとんと地面にたたき付けている。


「下尉は殊勝な方ですね。まず敵を知れと」

「確かに、ブルゼイ族は数が多くないはずなのに、なぜスヴェンニーととにかく相容れないというのは有名ですね。自分はあのセシリアという子以外でブルゼイ族を見たのは初めてです」


 ベルカとストレルカがいなくなった路地の方へと目をこらしていたウトリオも、ユカライネンの横に並ぶと教えを請うように私を見つめ始めた。

 二人を交互に見つめ返してしまった。そして、「私は知らないですよ」と肩をすくめて両手を広げて見せた。


「卑屈で嫌な言い方になってしまいますが、私は純粋なスヴェンニーかと言えばそうではないので。そのせいか、ブルゼイ族に対しての嫌悪はそれほどでもないですね」


 私たち三人から距離を取るように離れ、腕を組んで遠くを見つめていたラーヌヤルヴィの視線が私に強く注がれた。そして、彼女は苛立ち紛れに皺を集めていた眉間を伸ばすと、肘を叩いていた人差し指の動きが止まった。


「あくまで私の見解ですが、ブルゼイ族は籍があるものは少ないのです。ほとんどに籍がありません。人口がどれほどいるか把握されていないだけで、決して少数民族というわけではないのです。スヴェンニー同様に明るいところで生きられない者が多く、お互い暗闇で顔を突き合わせることが多いのでしょう。その結果、相容れなくなったのでしょうね。真相は定かではありませんが」


 それはあくまで建前。だが、それ()嘘ではない。


 二人に建前を並べていると、先ほど目が合ったラーヌヤルヴィが私たち三人に近づいてきた。

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