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エレミットとグーリヒア 第十三話

「や、やめてください!」


 ユカライネン下尉が突然声を上げたので、私は顔を上げてふと近くに置いてあった鏡を見ると自らの顔が映っていた。そこにいる私は口角が緩み不敵な顔で笑っている。普段任務中、まさかこんな顔になっているのだろうか。私は自ら気味の悪さに驚いた。


「二人とも。これから大変だって言うのに。仲間同士で殺気立たないでください!」

「そうです。差し出がましいですが、仲間割れはつけ込まれます」


 ユカライネン下尉は小さな拳を振るわせて、私とラーヌヤルヴィを強ばっているが咎めるように交互に見ている。その横からウトリオ上尉も私たちを止めた。二人のおかげと自らの顔に冷静さを取り戻せたのだ。私も落ち着こうと、大きくため息をついた。するとラーヌヤルヴィはふんと鼻を鳴らした。


「これはこれは、部下に気を遣われるとは私も情けない上官ですね。それにしても、ウトリオ上尉とユカライネン下尉は優しいですね。飴と鞭とはいい部下を持ちました」


 止めてくれた二人に微笑みかけながら、立ち上がりブルゼイ・ストリカザの方へと向かった。もちろん、ゆっくりと足音を殺さずに穏やかに。

 槍を持ち上げながら、窓の外の様子を見た。乾き砂だらけの風は収まり、その晴れ間から黄ばんだ青空が見えているようだ。


 ラーヌヤルヴィへの対応はゆるりと考えよう。何かしでかしたときは、そのときに考えよう。今のところではあるが、誰かを殺してしまおうという思考には至らない様子も見える。尤も、その情熱を北公とイズミさんたち以外の排除か、目的達成の為の従順さに回してくれれば良いのだが。


 槍を二、三度回すと空を切る音がした。手になじむ感覚を確かめた後背中に担ぐと、ユカライネン下尉が駆け寄って覗き込んできた。


「上佐、ど、どこかへ行かれるのですか?」


「気分転換ですよ。少し散歩にでも行ってきますよ。私は少し頭を冷やしたいので」


「そ、それなら私も同行します」


「おや、そうですか。構いませんよ。ご一緒しましょう。ひとけのあるところまで出て、どこか店にでも入ってお茶でもしましょうか。ですが、武器は忘れずに。全勢力は協力しあっているので敵はいないようですが、ここは連盟政府領内。敵地ですので警戒を怠ってはいけないのでね」


「上佐、自分もいきます! ラーヌヤルヴィ下佐も一緒に行きましょう! ね!」


 ウトリオ上尉に押し切られたラーヌヤルヴィは舌打ちをすると準備を始めた。

 彼女は槍のすぐ横に置かれていた箱からアスプルンド零年式二十二口径魔力雷管式小銃を取り出し背中に担いだ。

 だが、小銃は見慣れたものとは少し違っていた。砲身は一般兵に配備されている物よりも長く、金属が違うのか黒光りしている。ストックの木材は黒々としていて、彼女の杖と同じ材質にされている。どうやら特注品のようだ。

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