エレミットとグーリヒア 第七話
「教えて差し上げましょう。同期の好誼です。私はカルル閣下の指示に従い、イズミさんたちと共に目的達成のために邁進しています」
「それは大前提。その後ですよ。それで連盟政府にはどのような利益をもたらしていただけるのかしら、モットラ?」
「聖なる虹の橋のゲフィラナは、連盟政府の利益に基づいた自律的行動を許されていて、あなたの所属するメテセスよりは自由に動けます。様々なことを見られる私にとって、身の回りのこと全てが情報になることをよもや忘れてはいませんね?」
クロエの問いかけに私はそう答えると、彼女は腕を組み表情を曇らせていった。現時点において、私が口外して良い情報はその程度だけだ。クロエが同期であったとしても、いや、聖なる虹の橋の同期であるからこそ、その程度なのだ。
「的を得ませんね。何を隠しているのですか?」
「隠す。そうですね。原理に則ればそれは当然です。あなたはどうやらメテセスとして長く椅子に座りすぎて、現場を忘れてしまったようですね。“近き柱倒れば、他巻き込む。柱なる者、一人で立つべし”。秘密厳守の単独行動原理までお忘れですか?」
クロエは口元を隠すようにしてくすくすと笑い出した。彼女の中で何かを納得するときにやる癖だ。はったりかもしれないがその仕草を見せてしまった以上、彼女は話を打ち切らなければいけない。
「言えない、ということですね。ふふふ、わかりました。ですが、あなたが聖なる虹の橋の教義に基づいて動いていると言うことは理解できました」
「ご理解いただけたようで。要件はそれだけですか?」
「ええ、充分です。お騒がせしました。皆様、イズミさんの提案通り、共に黄金探しをしましょう。彼には感謝して欲しいですね。彼が望んで私をこの黄金探しに参加させて、そのおかげで他の支柱たちが来なくなったのですから」
「なるほど。それにも感謝しなければいけませんね。彼にはとことん嫌われていますが、何かと世話になることが多いので」
クロエは話を切り上げるとドアの方へと向き直った。取り囲む三人の真ん中を通り抜けるように歩み出し、通り過ぎ様にクロエはラーヌヤルヴィ下佐の肩を叩いていった。
「それでは、今日は失礼させていただきます。仲良くしましょう。ねぇ、ラーヌヤルヴィさん?」
開け放したままだったドアのノブに手をかけて、閉め際に顎を上げて首だけを振り向かせてそう言った。そのときの目は全く笑っていなかった。