エレミットとグーリヒア 第四話
「連盟政府諜報部、聖なる虹の橋蝶番所属のクロティルド……はフロイデンベルクアカデミアで焼死していましたね。では、シャーロット、いえ、ややこしいですね。クロエ、何か御用ですか? 第二スヴェリア公民連邦国軍の連盟政府領地内への不法侵入を咎めにでもいらしたのですか?」
そう尋ねるとクロエは口に手を当てて肩を揺らしながら笑った。
「何を仰いますか。ここは連盟政府固有の領土。さらに言えば、あなたたちは連盟政府軍内部の離反者たちでしかありません」
そして、彼女は自らの左胸ポケット辺りを掌で二、三度軽く叩いた。イングマールの軍服のその位置は、ちょうど連盟政府のワッペンが貼ってあったところだ。離反の際に志を一致させた同志たち全員が一斉に剥がしたのだ。元の主はここではないかと言いたいのだろう。
「つまり、連盟政府側としては国内の不穏分子が南下しているだけと言いたいわけですね。監視していることをわざわざ伝えに来たのですか?」
「モットラ。いえ、今はムーバリですか。北公では偉くなられたそうですね。聖なる虹の橋として共に汗を流したではありませんか。そう邪険になさらないでくださいな」
「要件だけを手短にお願いします。私はこちらの立場では上佐と決して低くない。あまり暇ではないのですよ」
「今回の黄金探しについて、何点かお話が……。ですが、その前にこのお三方の杖を収めていただけませんか? 怖くてお話が出来ません」
そう言うと掌を天に向けて、取り囲み杖を真っ直ぐ向けている三人を見渡した。
「あなたにも恐れを抱かせるとは、私は良い部下に恵まれましたね。確かに、蝶番は戦いには不向きです。下げなさい」
私が殺気立つ三人向けて右手で合図を出すと、三人は私とクロエを交互に怪訝に見つめて躊躇を見せながらも杖を下げた。それにクロエは鼻から大きく息を吐き出して微笑んだ。
「ありがとうございます。では、単刀直入に」
そして、改まるように咳払いをした。
「このたびの黄金探しについて、立場を明らかにしていただこうと思いまして。イズミさんが共同戦線を張ると言って全てを暴露してしまった今、誰がどこに所属しているかをはっきりさせたいもので。
あなたは第二スヴェリア公民連邦国軍、ムーバリ・ヒュランデル上佐ですか? 連盟政府聖なる虹の橋、跳ね橋部隊所属のヴィヒトリ・モットラですか?」
クロエは意味ありげな間を開け、口角の上がった口をゆっくりと開けた。
「それとも――」