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黄金蠱毒 第四十一話

 ユニオンが独立するよりも前に貰った開翼信天翁(かいよくしんてんのう)十二剣(じゅうにけん)付勲章をつまみ上げて、「金鉱脈でも隠し持ってんじゃないか?」とちらつかせた。


「もらった勲章も純金製だ、とは聞いてる」


 見せるために改めて触れてみると金の割合が大きようで、そのずしりとした重さがつまむ親指と人差し指に伝わる。

 ユリナは顔を突き出して勲章を覗き込んだ後、右手で握るように持ち上げるとぐっと力を込めて引っ張り前に出した。


「ちょっと、ピンでコートが裂けるからやめて」

「うっせ。黙って見せろ」


 本物なのかどうかを判断するために重さを確かめようとしているようだ。手加減してくれたようでユリナは引っ張るのを止めて掌に載せた。すると身体が少しばかり軽くなったような気がした。


「一応にも最高勲章だ。授けられたヤツが何を為したかで勲章の価値も跳ね上がるが、それはソイツが付けてるときだけだ。誰が持ってたヤツかわからなくなったら、勲章そのもの自体の価値は金属の値段になる。

 最高勲章が実はメッキでしたなんて、その国自体がメッキだって自分から言ってるようなもんだろ。純金製と聞いているし、相当な価値もあるはず。これまでで採れてきた量やら採れる見込み量やらもそこまで多くないからユニオンでの価値もそれなりにあるんだろ。俺は知らないが」


 ユリナのつむじが見えるほどに顎を引き、勲章を見やすいようにすることで視線をそちらに導いて、顔をのぞき込まれないようにした。アニエスの話では、俺は相変わらず嘘やしらを切るのが下手らしい。顔に浮き出てしまう表情で心を読まれることはなさそうだが、手が汗ばんでしまうの抑えられない。


 ユリナはしばらく勲章を眺めていたが、手を放すとそこから一歩引いた。そして、視線を左右に送った後、流し目で俺を睨みつけながら顔を上げた。


「――お前ら、この間ウチに来た後マゼルソンの家に行ったよな?」

「ああ、そうだけど。モンタンとそこで会った」


 ユリナの眉間が「モンタンに会った」という言葉に合わせて僅かに動いた。


 しまった。またしても言ってから思い出した。前回マゼルソン邸に行ったとき、ユリナに伝えられていた予定はマゼルソンのアニエスとの面会だけであり、モンタンがそこにいて話をするというのは彼女には知らされていない予定だったのだ。


「お前らそこで黄金の話聞いたのか?」


 俺はホントに馬鹿だ。先ほどからボロばかり垂れ流している。だが、黄金探しは共同作戦だ。今後モンタンが出てきたときに明らかになるのは必然なのだから、そちらについては本当のことを言ってしまおう。


「ああ、そうだ。マゼルソンの書斎でアニエスを面会させた後に、モンタンが来て話していった。黄金探し手伝えって」

「他は?」

「それだけ」


 俺は胸ぐらを掴まれて凄まれるかと思ったが、ユリナは顎を押さえて視線を左右に泳がせるだけだった。まるで何かを考え込んでいるようだ。

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