黄金蠱毒 第二十五話
「そうですね。問題は無さそうですが、急ぐに越したことはありませんね。
昼間の集会は意外でした。私たちは連盟政府側として黄金捜索に参加していて、情報が全くないので助かると言えばそうなのですが、どうやら黄金に近づくためには他勢力を差し置いて、さらに同じ連盟政府よりもあなた方とうまくやっていく必要があるので、お呼びだてしました」
「残念だけど、ここで俺たちに近づいて自分たちに有利に進めようってのは間違いだよ? 俺はあの場にいた全勢力に全情報を提供するつもりだからな? もちろん、ここで話したことも含めてだ」
「報告されてしまっては、私たち商会に影響は無さそうですが非常にややこしくされてしまいそうですね。ですが、なぜそのようなことをするのですか?」
レアは真剣な眼差しで見つめながらそう尋ねてきた。秘密が守られないことを責め立てよいとする怒りや混乱は見られない。俺がしようとしていることに何か考えがあることを理解しようとしているのはわかる。しかし、本当のことを言うわけにはいかない。
「みんなで仲良く。一つにまとめられて、平和的じゃないか。そして、俺たちは黄金に用はない。ブルゼイ族の生き残りであるセシリアに故郷を見せるためだけだ。そして、この黄金争奪戦から解放して普通の女の子として暮らして貰うだけだ。もし、この子の望む場所がそこであればそこで幸せにするのが俺たちの目的だ」
真剣に理解を示そうとするレアに騙すような言葉を言ってしまうことに対しては抵抗がなかったとは言えない。
和平に向けて前進するのは間違いないが、セシリアについてもこれだけ巻き込んでおいて後は普通の女の子として生きるのは不可能だ。もちろんだが、俺の言葉の全てが嘘というわけではない。それから、昼の集会で伝えていないことは山ほどある。特にその方法についてだ。
確かに黄金自体には用がない。しかし、黄金は独占するつもりなのだ。だが、俺たちは自分たちの私利私欲のためではない。元々相反していたエルフと人間、さらには人間の内部でさらに分裂してしまったが、そのバラバラになった者たちが唯一共通にしているのが、この黄金探しなのだ。
その者たちを一つにまとめるために、全ての勢力の共通の敵として俺が君臨するように黄金を独占するのだ。俺は全力で抵抗するから、戦争などとくだらないものを止めて手を取り合って黄金を取りに来ればいい。