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黄金蠱毒 第十九話

「イズミさん、先日路地裏で助けていただいたときに私たち連盟に協力すると言ったのはこういうことだったのですか、ふふふ。話を伺っていると私たち連盟政府は今現在情報弱者ですね。

 あなた方三人はどの勢力からも声をかけられていて、どことも協力しなければいけないのでここに集めたのですか。確かに、最もスムーズに黄金にたどり着くならこれが正しいかもしれませんね」


「そうだ。さすが、連盟政府諜報機関、聖なる虹の橋(イリスとビフレスト)の情報整理部だな。察しが早くて助かるよ。今日は誰だ? シャーロットか? クロティルドか? それ以外か?」


 嗤うクロエを押さえ付けるように抑揚無くそう言うと、クロエは笑うのをやめて刹那に視線を鋭くして投げつけてきた。


「あらあら、本当に面白い方。いきなり正体をばらされてしまいましたね。最後まで連盟政府御用の古代史研究者で通すつもりでしたが。

 ですが、立場はともかく、私はイズミさんの考えには賛成ですよ? バラバラに探してお互いに潰し合うくらいなら見つかるまで手を取り合ってさっさと見つけて、その後はそこで殺し合うなりして決めればいいのです。まだ手元に無いものを巡って殺し合うのなど時間の無駄ですし。ああ、そのお子さん」


 クロエは俺の足下にいたセシリアを見た。セシリアは驚きと恐怖で顔を歪めると俺のズボンを掴んで後ろに隠れた。

 クロエは前屈みになると覗き込むようになりセシリアに視線を合わせて微笑みかけた。


「イズミさんがお連れになっている女の子。セシリアちゃんと言ったかしら。その子もヒントなのでしょう? ね、ブルゼイ族のお嬢ちゃん? イズミさん、情報共有をしようというなら、それも言わなければアンフェアですよ」


 言われてしまったか。北公には気づかれていたが、他には知られていなかった自分の手札だ。遅かれ早かれバレるとは思っていたが、姑息かもしれないが、この場では話さずにセシリアをできる限り渦中から遠ざけたかった。仕方が無い。


「おい、おい」


 ユリナが載せていた足の踵でテーブルを乱暴に二回叩いた。


「おい、PTA。お前は連盟政府だな? 北公と私らの情報はもう漏れちまった。話の途中で狂言回しのフリしてしゃしゃり出てきてテメェさまの情報隠そうってんじゃねぇだろうな?」


「ピーティーエー? それは私ですか? イズミさんに言われてしまったので、自己紹介をしていませんでしたね。今私はシャーロット・ノーレと申します。古代史研究者……というのはもう通用しませんね。連盟政府諜報部、聖なる虹の橋(イリスとビフレスト)で情報整理をしている者です。どなたでも親しみを込めて、クロエとお呼びください」


 これまで目をつぶり微動だにしなかったウィンストンが、クロエの自己紹介に反応するように動き出して顔を上げた。


「ほう、クロエというのですか。先日イズミ殿に路地裏で治療して貰ったということは、エルメンガルト殿の家で私とジューリア、エルメンガルト殿の話を盗み聞きしようとしていたのは、あなたですな?」


「ええ、そうです。イズミさんがお考えのことを実行するのであらば、もはや隠し立てしても仕方ないですね」


 それを聞くと、ウィンストンは大きく頷いた。その横でジューリアさんは下を向いたまま肩を小さく揺らしている。

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