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スプートニクの帰路 第八話

“ツェツィーリヤ、君は本■■父親を知りたいだろうか。

 それは僕にとっては■■悲しいが、君がこれを読んで■■と言うことは、おそらく僕はも■■の世にはいないはずだ。大人になっているはずだが、まだ君は若■■思う。(大人になった君を見られないのは本当に残念で仕方が無い)。

 もし、生活に困るよう■■ったら彼を頼ると良いだろう。逆に自立していたり、誰かと幸せになっ■■たりなら、君が会いた■■きに会いに行くと良い。会わなくてももちろん。

 彼を探すとき■■めにいくつか目印になる物■■の手紙に書いておこう。

 その男の名前は先ほども書いたように■■■という。見た目は黒い髪で、勇まし■■男だった。仲間の女性とはぐれ■■まいヒミンビョルグで遭難したときに偶然家に■■り着いたらしくて、助けた僕たち夫婦の仕事をよく手伝って■■た。

 違う世界から来たと■■ていて、にわかに信じがたかったが確かに連盟政府に■■ない人間だった。あ■■ち旅をし行く先々で困難を解消して、さらに自らの見聞を広め■■め移動魔法の行き先を増やしている■■だ。僕は彼の移動魔法を頼■■遠出することも出来た。

 だがそれにより長期間、家を空ける■■も増えてしまった。それ■■違いだったのか、いや正しかったのか、ツェツィーリヤが生まれたのだ。


 ……父親失格か■■れないが、やはり君が生まれた経緯を書くとどうしてもあの男を悪役に仕立ててしまいそうなのだ。何度も繰り返すが、僕はツェツィーリヤ、君を愛娘として愛し■■る。本当の父親を憎むようなことを書いてしまうかもしれないので、これ以上は辞めておこう。彼は英雄だ。名前を出せばきっとどこかで会うことが出来る。……”


 それ以降は水濡れにより、完全に解読不可能になってしまっていた。だが、レナートの残したヒントを元にすれば、自ずと誰が父親かわかる。


 仲間の女性、黒い髪のたくましく献身的な男、そして別の世界から来たという事実。それから、女好きという素行から考えればやはり。


「残念だけど、やっぱりシンヤのことみたいだね」

「セシリアちゃんのお父さんがシンヤさんだったなんて……。シンヤさんのしたことはともかく、意外でしたね。イズミさんは驚かないんですか?」

「驚く。うーん、確かに意外だったけど、セシリアにはどことなく俺やシンヤが昔いた国の雰囲気があったからね。それがまさかシンヤの娘の一人だとは思わなかったけど」

「シンヤさんには会わせますか?」


 それはとても悩ましいのだ。

 シンヤは今孤独の中にいる。見舞いに来たとしてもユリナくらいだけだ。育てていないとはいえ、血の繋がった親子だ。


「……やめておこう。セシリアは両親……レナートとクラーラの死を見て、まだ幼いけどもうそのこと自体を理解している。それが間近に迫ったシンヤに合わせてまた死に近づけたくはない。シンヤには悪いけど、セシリアはこれからなんだ」


 そう言うとアニエスは意外にも納得してくれた様子で頷いてくれた。会わせた方がいいと言うと思っていたが、どうやら彼女も同じようだ。


「その代わり、今あの子にパパと言われているのは俺なんだ。父親の経験なんか無いけど、できる限り父親らしいことしてみるよ」

「甘やかしすぎないようにしてくださいね」


 アニエスはそう言うと両肩に手を乗せてきた。そしてぐっと押すと離れていった。押したときに掌で肩を握られたような感覚がした。振り返り彼女を目で追うと、ストーブのあるリビングを出て行った。セシリアの様子を見に行ったついでに、そのまま眠りに就くのだろう。


 薪ストーブを開けると、炉内から一瞬で汗ばむような熱風と遠赤外線に顔が熱くなった。夕食後に入れた薪はすでに炭になり、空気をゆらして赤くじんわりと光っている。そこへよく乾いた太い薪を二本入れて、吸気口を絞った。これで朝まではじっくり燃えてくれるだろう。


 雪の積もった窓枠から見える外はまだ吹雪いている。風も強くなり雪質も氷に近い。二、三日は吹雪くかもしれない。寒く外出は出来ないが、レアの到着も遅れてくれるだろう。

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