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デオドラモミの錬金術師 第二話

過去編です。

 襲撃に遭うということは、この野営地ももはや前線の一部となったのだろう。

 襲撃後ほどなくして近隣の前線が後退し始めたらしい。戦略的撤退と言う言葉が建前であることが透けて見えるほど戦況は悪いようで、のんびりとしていた雰囲気のこの野営地にも恐怖は音もなく忍び寄り、もはや覆い隠せないほどの緊迫感で満たしていった。そして次第にいずれ戦渦に巻き込まれるのだろうという絶望感が漂い始めた。


 奇襲から一週間経った後、高まりだした緊張感の日々の中で急遽班わけがされた。当初招集をかけた協会は激しい戦闘行為を想定していなかったようで、派遣された剣士と学徒だらけのこの部隊はまとまりのない寄せ集め状態だった。それを解消するためにとられた措置のようだ。いよいよをもって殺し合いが目の前に迫っているようだった。


 昼を過ぎた頃、班わけの表が張り出された。何人かで一まとめにされた表の文字を追っていくと私の名前はすぐに見つかった。

 私の班は五人だった。メンバーを一人ずつ確認していった。

 タバコ仲間であるアルフレッド、その友人であるビョルトゥンのリクハルド、占星術師のダリダ、この三人とは面識がある。タバコを吸うアルフについてきたリクと、それについてきたダリダ。リク以外は喫煙者で、喫煙所で顔を合わせることが多く四人でよく話していた。リクとダリダは恋仲だ。チーム分けは即戦力を期待して仲のいい連中同士でまとめ上げたのだろう。


 しかし、五人目を確認した時、私は目を疑った。


 最後の一人はマリソルだったのだ。


 疑問はあった。なぜひとりだけここに割り振られたのだろうか。しかし、私はマリソルが同じ班であることに体が軽くなったような気がしたのだ。あの朝の後姿ばかりが頭の中をよぎり、彼女に何かを期待するようなわくわくするような感じがしたのだ。



「私とリクに、アルにユーちゃん。結局仲良しグループね。マリソルさん、よろしくね」


 班分け発表後、メンバーは一か所に集まった。

 五人で一同に介した時、マリソルは腕を組んで難しい顔をしていた。


「仲良しグループだな。ピクニックなら内地でやれ」

「……よろしく頼むよ。ブルジョワ剣士さん」


 むっとしたアルフは少し強めの視線でマリソルを睨み付けた。彼女の開口一番の言葉にあまりいい思いはしなかったようだ。


「剣士のねーちゃん、よろしく頼むぜ。俺はリクハルド・カウニアイネンだ。ビョルトゥンてのはなぁ」

「寒冷地の蛮族の戦士、階級により異なる獣の革を被る地域特有の戦士だろう。まだ(ビョルン)と言うことは言うまでもなく新人だな。説明は不要だ」

「なんだご存じかよ。よろしく頼むぜ」

「マ、マリソルさん、お願いします。ユストゥス・グリューネバルトです」

「貧弱導師はまだいたのか。足を引っ張るなよ」

「あははは……」



 学徒ばかりで構成される他の班とは違って、この五人班での学徒は私とダリダだけだった。アルフ、リクは二人ともここでは数少ない就業者、つまりプロだ。それゆえ、班での任務は危険度も数も他所よりも多かった。私を除くメンバーは戦闘力が高いうえに、ダリダは特殊の中でもさらに特殊だ。それらが集められていることを考えると、マリソルが同じ班にされる理由が疑問ではなくなった。誰も言わないがエースチームのような扱いなのだろう。

 私は戦いの中で疲弊してしまうことがほとんどだった。サポートで遠巻きに攻撃支援や防御支援を行うのだが、複数人同時に行わなければいけない。アルフやリク、マリソルは三人とも超攻撃型なので三人同時が普通だった。



 マリソルはチームワークこそ乱さないが、私を含めた四人と接点を頑なに持とうとしなかった。任務が終わり野営地で解散をすると一人離れていく。


「ユーちゃん、またマリソルばっかり見てる」

「ははは、お前ああいうのタイプか」

「ユー、結構偏った趣味だな」


 気が付けば離れていくマリソルを目で追いかけていた。私自身もそのことに気が付いておらず、恥ずかしくなり焦って否定した。


「ちがっ! そんなことないですよ。リクさん、あんたもダリダさんばっかり見てるじゃないですか!」

「そりゃあ俺たちはなぁ」


 リクは人差し指で頬を掻いている。ピタリと動きが止まると、何かを思い出して続けた。


「そうだ。おまえらに報告があるんだ。ここでの戦いも具体的ではないがあと少しらしい。それで俺とダリダは戻ったら結婚することにしたんだ」

「ちょっと、リク! まだ言うの早いって、もぉ」


 リクの横でダリダが紅い顔をしてもじもじとしている。

 仲間のうれしい話題にアルフのテンションが一気に上がったのか、声を大きく張り上げた。


「おおお、本当か! しかし、みんなそういう年齢になったんだな。リクもダリダも25だしなぁ。そういえばユー、いくつだっけ?」

「……28です」

「年上だったのか! お前も早いとこ相手見つけないとな! 先輩! ははは!」

「余計なお世話ですよ」


 私はまたしても遠くに離れて行くマリソルの横顔をちらりと見てしまった。



 それから戦いと日常の中で見せるマリソルの煌めきから私はますます目が離せなくなっていた。


 私のミスで二人が怪我したことがあった。幸い致命傷ではなく、野営地にも近かったので事なきを得た。しかし、マリソルは怒りを露わにぶつけてきた。


「貧弱導師! お前が遅いからアルフとリクが負傷した!」

「俺ァかすり傷だよ。アルフのけがも大したことねェから」

「足を引っ張るなら去れと前にも行ったはずだ」

「オイオイ、それぁ言っちゃいけないよ。俺たちは班行動しろって言われてるんだから。ユーのサポートも加味されてんだよ」

「チッ」


 舌打ちをすると背中を向けてその場を離れて行った。

 彼女の言うことは尤もだ。何一つ間違いではない。しかし、どれだけきつく言われても私は班を辞めようなどと考えもしなかった。




 とある学徒が野営地から脱走した。日々緊迫していく状況の変化に耐えきれなくなったのだろう。逃げ出したい気持ちもよくわかる。

 戦況を伝える張り紙の頻度が日に日に減っていくということは、都合の悪いことには蓋をすることと同じで、言わずもがな戦況の悪化を意味している。まだ安全な野営地からそんな状態の敵陣の真っただ中へ無防備に入るということがいかに危険かわからなかったのだろうか。どこの学校かは知らないが愚かだな、と思った。

 いなくなったのは二日前で、そう遠くへはいけまい。私とマリソルが二人で捜索にあたることになった。捜索は安全考慮のため数キロ四方のみで、六時間以内に見つからなければ死亡となり捜索を打ち切り、もしくは、脱走のために使うと思われる最寄りの橋は以前民間人殺害事件があった橋であり、そこを通過すれば生存扱いで捕縛されて最前線の膺懲部隊(デディケーションユニット)送りだそうだ。いずれにせよその学徒は終わりだな。


 捜索を始めて一時間が経過した。深い森の中はしっとりとしていて苔だらけで足場が悪い。

 その中をずいずいと進むマリソルについていくだけで精一杯だった。


「だいぶ森深くまで来ましたね」

「ふん、怖いか?」

「まぁ、怖くないかと言えば嘘ですね」

「死にたくなければ私についてこい。しかし、いくら捜索だけとは言えこんな貧弱な奴と組まなければいけないのだ」

「あははは……すいません。できる限り足手まといにならないようにしますよ」


 森に深く進むとぎゃあぎゃあと死喰鳥の鳴き声が強くなってきた。

 前を進むマリソルの銀髪がゆらゆらと揺れると、光を強く浴びているわけでもないのに輝いて見えた。


「そういえば、この間、と言っても結構前ですが、ありがとうございました」

「何のことだ?」

「あの塔を壊した時に助けてくれたのってマリソルさんですよね?」

「あのときか」


 彼女は立ち止まると、額に手を当てて空を見上げて何かを確認した。


「なぜお前を助けたんだと思う?」

「わかりませんね。私は弱いからですか?」

「わかってるじゃないか。戦力だと思ってすらいない」

「ははは、そうですか。確かに錬金術師は向いていないですからね。でも、そのおかげで今こうしていられるわけですからありがとうございます」

「ふん、貧弱導師め」


 ぱたりと目の前でマリソルが立ち止り、手のひらで前方を遮った。

 何かと思い彼女の背後から覗くと少し開けた場所があり、そこには死喰鳥にたかられた丸太か何かが落ちていた。それはどうやら逃げ出した学徒のそれ、のようだ。

 どれほどの力で殴り飛ばされたのだろうか、腹部は裂け中身が飛び出し、周囲の木々にこびりつき、残された手足は原型の倍ほどの大きさに膨れ上がっていた。まだ腐敗臭はせず、そのかわりに鼻の奥に擦りつけられるような柔らかさのある酸化した鉄の匂いがむわりと立ち込めている。

 近づくと死喰鳥たちは獲物を横取りされまいと羽を広げ威嚇をしてきた。それをマリソルがティソーナで払いのけると飛び立ち、上空を旋回し始めた。


「やはりか。死んでいたらエンバーミングして持って来いと指示が出ていたな。しかし、解剖の知識もない上にここまで損壊が激しいとどうも厄介だな」


 彼女も野営地の外は危ないと踏んでいたのだろう。生存は絶望的と見て、死体に群がる鳥を目印にしていたのだ。


「マリソルさん、私がやりますよ。まだ、その、言い方が悪いですが新鮮みたいなので」

「貧弱導師、お前できるのか?」

「完璧には無理ですが。フロイデンベルクアカデミアで人体解剖の講習を受けましたので。副科目で習ったそれがここで生きるとは思いませんでしたよ。講習の献体はもっと薬臭くてきれいでしたけどね。この人の宗派は知りませんが簡単な祈りを捧げましょう」


 祈るために跪き顔を覗きこむと、この学徒は喫煙所によくいた一人だった。

 優しい魔法使いで、一度タバコの火を借りたときに面白いものを見せてくれた。タバコを持ったまま木の陰に隠れても火の玉を正確に先端に当てられると豪語していた。魔法使いにしてみれば簡単なものだと彼は言っていたが、実際にやった時は驚いたものだ。

 優しさゆえに戦場に迷いを抱いてしまったのだろう。彼を愚かだと思ってしまった私自身を少し呪った。

 鳥たちに喰い散らかされたのか、もともと散らかっていたのかはわからない小さめ肉片を集めた。真っ赤なそれは小さくても人の一部だったと思うと不思議な気持ちになる。大きめの肉片に触ると、重たいそれには弾力がある。ゴムでもない布でもない、人の肌と言う表現以外はないものを袋にして、それにめいっぱい水を入れたような、そんな感触だ。普段触れ合う人肌は暖かいが、その時触れた肌は冷たくて、到底人のものだとは思えなかった。


 手短に祈りをささげた後、私は集めた大小さまざまな死体の肉片を錬金術で人の形へとつなぎとめた。内部の筋や腱がどうなろうと、外からの見た目はおかしくならないように注意を払った。間接が硬くなり始めていた顎の骨を触ると、喉のあたりがわずかに動いた。正面から顎を殴られて真ん中で折れたのだろう。おそらく、死後から四、五時間も経過していない。敵が戻ってくる可能性もある。はじけ飛び周囲の木に点々と飛び散った彼の中味を一つ一つ回収している暇はなく、目についたものだけを雑にまとめ、その場に埋葬して亡骸を野営地に持って帰ることにした。埋めた場所には目印と墓標代わりにするための申し訳程度の石を置いた。

 その様子をマリソルは腕を組んでじっと見つめていた。


「野営地に戻って杉の油を注入しましょう。そのあとはプロが何とかしてくれますよ」


 簡易の担架を作り亡骸を野営地まで運ぶことになった。前をマリソルが持ち、後ろを私が持つことになった。


「待て」


 担架を持ち上げ動き出そうとしたその時だ。マリソルは唐突に立ち止まった。


「これは死んで何時間だ?」


 さわさわと木々がささめく。風以外で木の葉がざわめく音がした。何もいないそこに明らかに何かがいる。

 木々の中から何かの気配が強くなった。死後の経過時間を彼女にまず伝えるべきだった。やはり敵はすぐそばにいたようだ。


「いまさらですが、死後二時間てとこでしょうか」

「先に言え、まったく。敵は四、五人か。おい貧弱。合図したら担架から手を離してかがめ。そしてある程度距離をとってわたしのサポートにあたれ。亡骸を地べたに落とすのは失礼だが、彼を生者の足を引っ張る亡者にしてはならない。いいな?」


 視線だけをこちらに向けた彼女の言葉にうなずいた。

するとマリソルは腰を低くして構え、手を離せばすぐ剣を抜ける状態になった。

 周囲が殺気立ち、はち切れそうな空気に包まれた。


「今だ!」


 声に驚き手を放した。そのまま屈むと同時に背後の木の陰から武器を振り上げた敵が走り出てきた。

屈む頭の上を大剣が通り抜ける。ティソーナの間合いはすさまじい。髪にわずかにそれがふれる感触が伝わる。切っ先ではじかれた敵の武器は宙を舞い、鈍い音ともに地面に落ちた。敵がバランスを崩し倒れたその隙を突き、私は距離をとった。そしてマリソルの武器の威力と彼女自身の身体能力を強化した。勢いも上がり、彼女を取り囲んだ襲撃者を銀の閃光のように素早くなぎ倒していった。そして最後の一人となった。声を上げ、狙い定め仕留めにかかったその時だ。

 私の横を音もなく何かが通り過ぎ、それがマリソルの肩に当たった。勢いづいていた彼女は体勢を崩した。鈍い音がすると殴られた彼女が私めがけて飛んできた。勢いに押され受け止めることができず、後ろに倒れ込んでしまった。すぐさま上に乗りかかる状態のマリソルを起こした。


「大丈夫ですか!?」

「大事ない! が、わき腹が痛い」


 そういうと立ち上がろうとした。しかし、痛みが走ったのか息が荒くなり、剣を杖にして力なく膝をついてしまった。

 彼女に損傷を与えたのは魔法ではなく、油断した際に受けた打撃だ。ならば敵の魔法使いの実力はそこまでではなく、決定打にはできないから隙を作る程度だと察せる。それに目にもとまらない速さは初速から速度が落ちていない証拠だ。近くに隠れているはずだ。しかし、どちらから飛んできたのかはわからない。

 私にはサポートしかできないからわかったところでどうしようもない。唯一の仲間である戦闘要員も負傷した。

 マリソルを殴った目の前の敵は、援護魔法があることに余裕を取り戻したのか再び武器を掲げ襲い掛かろうとしている。

 このまま私だけでは彼女を守れない。二人分の死体が増えるだけだ。


 目の前で跪き、肩で息をする彼女をどうすれば救えるか、必死で考えた。

 隙を作る程度の魔法攻撃なら、まずは目の前の敵を片づけさえすれば何とかなるはずだ。


 だが、もし敵魔法使いが実力を隠していたならばどうする。

 しかし、実力があるならば最初から積極的に介入してくるはずだ。

 なぜ最後の一人になるまで動かなかったのか。先に倒した四人はマリソルを囲んでいた。照準も合わせられない程度の実力で、仲間を誤射する可能性でもあったのか。



 辺りを見回すと、力なく転がるあの学徒の死体が目に入った。

 “タバコを持ったまま陰に隠れても火の玉を正確に当てられる。魔法使いには簡単なことだ。”


 そうか。敵の魔法使いはほとんど素人だ。間違いない。


「マリソルさん、走れますか?」

「逃げる気か? お前の脚力じゃ無理だな」

「いえ、勝ちに行きます」


 訝しむマリソルに作戦を伝えた。

 敵の魔法使いは、おそらくマリソルが攻撃態勢に入り襲い掛かる瞬間を狙って魔法を使ってくる。獲物に意識が集中した瞬間がどの瞬間よりも隙ができるからだ。体勢を崩すために今度は足を狙うはずだ。それが当たる瞬間に錬金術でエネルギーを奪う。奪ったものはそのままマリソルに襲い掛かる敵の脚におまけをつけて打ち込み、転倒させる。そして魔法が飛んできた方角を割り出し、敵魔法使いの場所を特定する。


「割り出してどうするつもりだ?」

「それはそうなってからで」

「貧弱なくせにいっぱしな作戦を考えるな。やらねば死ぬ。やるぞ」

「痛みで気を失わないでくださいね!」

「ナメるな! 行くぞ!」


 マリソルは立ち上がり、目の前の敵へと立ち向かっていった。

 鬨を上げる彼女から目を離さず集中した。


 剣がまさに武器に当たる瞬間だ。先ほどと同じ気配を感じ、魔法を唱えた。すると視界の隅を通過した火の玉が音もなく消えた。エネルギーの収奪はうまくいった。私はさらに魔法を唱え、収奪したエネルギーにさらにおまけをつけ敵にぶつけるために魔法を唱えた。しかし、狙いが悪く顔に向かって打ってしまった。力を必要以上にこめてしまったのか、幸か不幸か当たると同時に敵の顔が弾け飛んだ。

 いや、まだだ。これで終わりではない。


 火の玉はどこから飛んできたか。後ろだ。私の右後ろだ。

 そちらを振り向くとわずかに光が見えた。第二射が来る。


 間に合わない。どうすればいい。


 私は咄嗟にその方向に向けて魔力増強術を強烈に放った。

 すると光の見えていた場所から断末魔の悲鳴が聞こえてきた。苦痛に嘆き顔を抑え茂みから出てきた敵の体は血管や筋が浮き出しみるみるふくらみ、次第に原形をとどめなくなっていった。そして、壁に打ち付けた水風船のように音をたて血をまき散らして破裂した。


「……何をした?」


 マリソルは顔のない死体の前で剣を杖に膝をついている。痛みが強いのか、先ほどよりも肩の動きが大きい。

 私はうまくいったことに安堵したのか、膝が震えだした。


「魔力を強烈に与えました。コントロールできないほどに。サポート魔法も何も考えずにやりすぎるとああなります」

「そうか。とりあえずやったか……」


と言うとマリソルは意識を失い倒れた。


 陽が傾き始めて暗くなった森を抜け、私は彼女を担いで野営地まで帰った。死んだ学徒には悪いが、一旦は身分を証明するプレートみたいなものだけ持ち帰り、死体は後で回収することにした。

基地に付くとマリソルは意識を取り戻した。やはり屈強な戦士は治りも早いようだ。

 衛生兵が集まり彼女を担架に乗せて運んでいく時だ。


「ありがとう、ユウ」


 マリソルは笑っていた。その時の顔は忘れられない。

 笑うとこんなにもかわいらしいのか、と。


 私の呼び名が貧弱導師からユウと変わったのは、それ以来だった。


読んでいただきありがとうございました。

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