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彼女の商量 第八話

 しかし、特に何も言わないままそうした後、話を再び始めた。


「まぁ、いいでしょう。シバサキがどれほど好条件を並べたのかは知りませんが、勇者という立場が無くなるとあらかじめ公表されて以降、職を求めた元勇者の多くが参加することになりました。しかし、最初の資金繰りで問題が起きて新聞発行以外の仕事をしていました」


 レアはわかっているでしょう、と尋ねるかのように俺に視線を向けている。


「ヤシマの起こした誘拐事件か」


 相づちのようにそう答えると、レアも頷き話を続けた。


「それも一つですね。卑怯なことにシバサキは自分の立場を隠すために、他の勇者を介して指示を出していました」




 シグルズ指令が過激になったのは、最近の連盟政府内における情報共有速度の向上に向けた一連の動きが大きく関係しています。まずそちらの話からしましょう。


 新聞が出てくる前にもキューディラを応用した掲示板機能と言うものはありましたが、新しめのキューディラさえ持っていれば誰でも書き込めるので、あまり信憑性が高くなく、私たち商会も監視程度しかしていませんでした。


 それから私は金融省長官選挙の際にイズミさんについていく形で共和国に入り、そこで新聞を目の当たりにしたことを商会に報告しました。そして、その報告の後、連盟政府内でも発行しようという動きがどこからか湧き上がりました。


 連盟政府は魔術系三大校の教育方針の各自治領への継承により、軍学校においても訓練と同じ程度の教育が施されるようになり、また地域の小さな教育施設の質も上がりました。そのおかげで識字率をぐんぐんと上げていました。つまりほぼ誰でも文字が読めるような状態になっていたのです。文字を読みたがる者が増加していたので、新聞がとても大きな力を発揮できる環境がすでに整っていました。それ故に商会も政府もその大きな利用価値に着目していて肯定的でした。


 しかし、発行しようと言う機運は日々高まってはいましたが、政府、協会や商会のどこもそれには関知しておらず、誰が始めようとしていたのかはわからなかったのです。それから各機関は独自に調査をした結果、驚くべき事が判明したのです。当初、識字率向上に貢献したストスリアの誰かではないかと疑われてしましたが、なんと勇者たちが興そうとしていたのです。


 早速と政府、協会、商会の代表者たちとの会合が行われました。勇者側はまだ具体的では無く、何も決まっていないと言い続けていました。しかし、話し合いの際には一切伝えられることは無かったですが、後の話ではその時点でもうすでに発行は決定事項であり、具体的な記事の内容も内部では書かれていたそうです。それについて会合に現れた者たちは本当に知らなかったそうです。


 そして、その頃は折しも古典復興運動が活発化の兆しを見せ始めており、代表者たちも対応に追われて十分な話し合いを設けることができませんでした。


 その混乱期の中でとびとびで会合が行われる日々がしばらく過ぎたある日、突如発行しますという連絡を新聞社側からしてきたのです。しかもそれは発行の前日でした。

 いかにも勇者たちがやりそうなことではありましたが、私たち商会だけでなく他の機関も度肝を抜かれました。

作品は作り手を選べない。

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