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彼女の商量 第一話

 出口が開いた位置はおそらくレアの足下だ。


 ヴァーリの使徒の白面布が風に揺れると、下から彼女の小臼歯が先天的に無さそうなほど小さな顎がちらちらとのぞいている。おそらく鞄か何か、レアの足下に置いてあった物がテッセラクトの出口になっているのだろう。

 それが突然内側から開かれて指が出てきたことに気がついたレアは驚いたように見下ろしてくると、眉間に皺を寄せて出口の縁を掴んだ。そして、両手に力を一杯込めて出口を閉じようとしたのだ。だが、一度その手が止まると左右を見回しはじめた。出口から見えていた曇り空が動きだした。どうやらどこかへ移動したようだ。

 空の様子が止まると「ちょっ、なんで今出てくるんですか!?」と再びこちらを睨みつけた。出てきた瞬間に魔法をぶっ放されるかと思ったが、予想外の反応だった。それに驚きつつも、とにかく暗闇から出ようと閉じられつつある出口を無理矢理広げようとした。


「なんだその言い方? まるで出てくるのを予想してたみたいじゃないか!」

「ごちゃごちゃうるさいですよ? とにかく今はダメです。また後でだしてあげますから、いったん引っ込んでてください」


 レアはさらに渾身の力を腕に込め始めた。歯を食いしばり白装束の前腕をむきっと膨らませている。あらがえないほどの力でぐぐぐと閉め始めたのだ。俺は力で負けてしまい、ついに出入り口が再び一本の線になってしまった。


 筋肉を震わせなければいけないほどの力で抑え込まなければいけないとは一体どういう状況だったのだろうか。力みすぎて痛みの残る掌を開いては閉じて見つめた。


 細い線から見えていた外の様子は、彼女がテッセラクトを持って動いているようで、景色か人かが見えたり影になったりしている。ここは鞄の中だが、見えている外の様子では鞄がだいぶ動かされているにもかかわらず、揺れたり、おされたりしないので不思議な感覚だった。次元が違うので何も感じないのだろう。


 そのまま十分ほど経過すると再び隙間が開かれた。その先ではレアが不服そうな顔をしてこちらを覗き込んでいる。


「おい、レア。俺たちをどうするつもりだった? 消し飛ばすんじゃなかったのか?」

「ええ、あなた方は文字通り死にましたよ。ですが、人前で鞄に向かってぼそぼそしゃべるのも恥ずかしいので、とりあえずそこから出てもらえませんか?」


 そして、不満げな口調で「どーぞ」と言うと、出入り口は人が通れるほどの大きさまで広げられた。

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