彼らの商量 第十三話
「戦争屋には関係ない! カルルに何を売ったんだ? 移動魔法を使えば、君は俺たち三人を同時に仕留められたハズだ! 能書き垂れるためにアイツだけ殺したのか? いや、なんで君たちまで銃を持っているんだ? カルルから買ったんだろう?」
「質問ばかりですね。少し落ち着いていただけたかと思いましたが、まだ混乱なさっているのはよくわかります」
見えていた目だけが大きく開かれ、首を右下に向けため息をこぼした。
「それにしても、やれやれ、何から何まで移動魔法頼みですか。あなた、ノルデンヴィズの前線基地で何を見たのですか? 封じられるということは封じられてしまうと言うことも考慮に入れて戦わなければいけません。あなたにはそれが可能ではないですか。
そして、戦いというものは敵の数を減らすことで勝利に近づくのですよ。強敵を倒して得られるのは勝利では無く、ただの達成感だけです。英雄が一人で百人殺す時間と、千人の兵士が百人殺す時間は同じなのです。強者にかけている時間よりも、さっさと殺せる弱者から排除し素早く駒を進める時間のほうがよほど大事です。試合ではなく実践の今、卑怯という言葉は意味をなしません」
僅かに間を開けて「さて、話を戻しましょうか」と言うと表情をなくした。そして、続けて「和平はいったいどうなさったんですか?」と先ほどよりも強い口調で尋ねてきた。
「君はもう関係ない! 袂を分かったんだ! 俺は俺のやり方を貫く! だが、借金はいずれ必ず返す! 君が自らのすべきことをしているのはよく知っている! でも、俺はそれに賛同できない! だから、君には……」
ウソはついていない。だが、今この場は生き延びなければいけない。何とか逃げ出せないだろうか、そう考えながらも、冷たい視線を投げかけてくるレアに動揺混じりで訴えかけていた。
しかし、布の隙間から見えていた眼差しが一気に鋭くなり、
「いい加減になさい!」
とレアは大声を上げて俺を一喝した。
「あなたはノルデンヴィズで燻ってた時代とはもう違うんですよ? あなたは旅をして戦い、そして数多の世界を知りました。知ってしまいました。その偉大な旅路の中で、得たものはあまりにも大き過ぎる! その言動一つで世界を動かせるのですよ! もう後戻りなんてできません! 手に余るなど言ってる暇はありません! その自覚を持ちなさい!」
俺は圧倒されてしまった。これまで見たこともない覇気で猛り狂うレアはノルデンヴィズまで俺を運んでくれた彼女では無いのだ。
「し、しないとはいっていない。ま、迷いがあるんだ!」
出てこない言葉を探し空気をかんだ後にやっと出てきたそれらは、足りず、そしてあまりにも情けなかった。レアは布の上からでもわかるほどに眉間に皺を寄せている。
「迷い? 迷っている暇に物事はすべてを置き去りにしていきます! 動かぬはやらぬと同義! やらぬは諦めと同義! 和平を諦めた選ばれし者、あなたも禄盗人の勇者どもと何も変わらないのですね。少しは期待していたのですが、残念です!」
レアは右下を向くと、指先をこめかみに当てた。