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紅袂の剣騎士団 第十八話

「繰り返しになるが話をまとめよう」


ルカスは大きく咳き込み、深く椅子に腰かけた。


「ミイラ取りがミイラになるには、まずミイラが必要だ。そして、そのミイラがあの“金髪の女児”のウリヤであるのは間違いない。犯行声明の中で名前が出てきたようにな」


 くるりと椅子を回し、外を見た。珍しく風のない曇り空だ。薄曇りは穏やかに動き、今にも晴れ間が刺しそうではある。


「その中ではまるですべてウリヤが立ち上げたような言い方をしていた。しかし、ヘマからその“金髪の女児”の話を聞いていた限りでは、まだ幼く思想など知らぬ無邪気な子供に過ぎなかった。

 私には娘が二人いるのでよくわかる。子の嘘などすぐにわかる。それに保護当初は何者かもわからず、親を亡くしたエルフの孤児でしかなかった。

 つまりヘマが匿ったときはまだミイラではなかったということだ。共和国がユニオンに正体不明のミイラがいると騒ぎだした後に、ウリヤはミイラにしたて上げられた。

 そしてミイラに近づいた者、まぁおそらく調査団だな、もミイラになった。確かに、ミイラ取りが本当に調査団かどうかも大事ではある。真偽のほどは疑わしいが、とりあえず今のところは彼らがそうだと思って動こう。

 それよりも私が一番気になるは『ミイラを作った奴』だ。君の共和国長官たちへの信頼と話を信じたうえで、私が言いたのはそのミイラ職人が所属しているところが黒幕だと私は考えるが、どうだね?」


 デスクに向き直り、両腕を置いた。


「果たしてその黒幕がどこなのか。共和国か、連盟政府か、友学連か、はたまたユニオンか。どこの意向かはひとまず置いて、クロエは話の中で連盟政府は無関係と主張し、そして黒幕は共和国であると導こうとしているわけだ。国内どころか、あちこちを巻きこまなければいけない話になってきたな」


 つまりユニオン一国とその他どこか一国の問題ではなくなったと言うことだ。現時点で大国は厳密には四つある。そのどこかしこも新体制と言うわけではない。かつての領主などがある程度引き継ぎ運営している。

 それはユニオンも例外ではない。相手はそれも知っていて、どんな人間が運営していたかを知っている。つまりこちらも相手を知っているほうが話が早い。となると、


「ならば、かつての自治領主業務で確固たる実績があって他国とのやりとりに慣れているカリストを早く復帰させなければまずいのではないですか? 回復魔法ならすぐに全快できますよ?」


「止めたまえ」


 だがルカスは即答した。


「カリストは意識を取り戻した。まだ事情を聴けるほどではないがな。必要ない」


 すぐに完治させられる俺はカリストの治療から引き離されているのは間違いない。これまで感じ続けていた妙な感覚をそのままぶつけることにした。


「ルカスさん、あんた、俺をカリストから遠ざけてませんか?」とやや強めに尋ねた。


「なぜ、そう思う?」


 やはり気に障る発言なのだろう。顔も体も向けずにややあって視線だけを俺に投げつけてきた。そう、より強く睨み返す様な。


「俺が行けばカリストさんをすぐに治せます。記憶もないほどに。あなたは記憶が大事だと言っているが、目撃者にはヘマさんやバスコさん、ティルナなど大勢います。

 カリストさんの記憶自体の価値はヘマさんやバスコさん、あなた自身のものと比べても差がありません。いざとなればその中の誰かが証言すればいい。

 それに、あなたは上に立ちたがる。自分と同列とそれ以上が不在になったことで頂点に立てたあなたはそこに居座り続けたいから、カリストさんに復帰されて困るんじゃないですか?」

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