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紅袂の剣騎士団 第三話

 サント・プラントンではスヴェンニーたちへの迫害が未だに色濃く残っていること、商会と結託しそれを助長して来たこと、誰の物でもないはずの海上使用税や商会拠点がサント・プラントンに無いことへの税を課してきたこと、などなど。


 この演説を聞きながら俺は初めて連盟政府の政治体制を知ったような気がする。


 これまでエルフの共和国の四省長官、ユニオンの五家族には直接触れたが、連盟政府の中枢には未だかつて触れたことがない。


 連盟政府には、中央議会なる組織があって、政府中枢から指名、各自治領主から任命された代表者である采領弁務官が出向して会議に参加する。


 言わずもがな代表者であるので漏れなく貴族であり、派手である。豪華さを競い合うことで自分たちの領土は豊かであるというアピールをするためだ。それが悪ではない。見た目さえ良くしていればそれ相応の視線を向けられるからだ。そして優秀である必要はない。向けられる視線さえよければ、自治領としては位が高いそうだ。


 100ある領地の51が同じ派閥であり、その中の26が同じ考え方を持ち、さらにその中の13が賢ければ国は回せる。49がバラバラでも、13だけまとまれば多数決によって賢いものたちがの意見が反映されるのだ。

 かつてここがイスペイネ自治領だったとき、広大な領地もあり大規模な商会もあった彼らは、支配権を強めないようにするために五家族と言う形を取り、その13の一つに並べられていたそうだ。



 それからも続いた内容によると、エルフを見下したり、スヴェンニーの迫害を放置したりとこれまでしているのはどうしようもないことばかりだが、軍隊を外には侵略、内には弾圧のために動かすような、末期的クソ国家と言うわけでもないらしい。


 ただ派手な貴族の贅沢に市民が付き合わされているのが大きい。200年も国が安定して続いていれば議会の当初の目的も失われるか、変わってくるのは必然なのだろう。

 戦争は起きていても争いは少なく、貧困層ばかりが目立つわけでもない。故に議会も煌びやかさの勝負の場所になっていたのだろう。


 そうしていくうちに政治力は弱まっていたが、それでも国は回っていた。そのような惰性に呆けてていたところに、エルフとの和平交渉は寝耳に水だったのだろう。対応についてのノウハウを知る者がいない。それゆえに強引な外交しかできなかったのだろう。

 それでもまだふわふわとしている連盟政府にユニオンの独立はいい薬だ。呆けた頭を目覚めさせるにはちょうどいい危機ではないだろうか。


 だが、敵がいなくなると連盟がまとまらなくなるのではないだろうか。それが仮想であっても国をまとめ上げるには必要だ。これまでのそれはエルフだったのだろう。

 今後そのエルフたちと和平を結んだあとはどうするつもりなのだろうか。平和になればまたどこかで敵を作るのは間違いない。

 場所が変わっても住んでいるのは同じ人間である。つまり仮想敵国を作るのはユニオンも同じはずだ。ユニオンが共和国との和平を素早く推し進めたのは、連盟政府がまだ共通の敵である状態で共通意識を持たせるためだろう。


 まさかとは思うが、連盟政府はどこかの自治領が独立するとでも思っていたのだろうか。そしてそこを仮想敵として。


 いや、そこまで賢いとは思えない。

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