表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

367/1860

やがて消ゆもの 第二話

 車たちの音に負けないような大きなプロペラの音がして空を見上げると、青い機体が朝陽を遮り逆光の中で一瞬輝く。陸に向かって飛んでいくそれは、きっとこの間のあの基地に向かっているのだろう。


 飛行機はマルタンの件以降、当たり前のように上空を旋回するようになった。よく見るのは小型機ばかりだ。


 何日か前にティルナに話を聞いたところ、小型機には何種類かあり、単座式と複座式、全魔力型と魔石動力型と全魔石型で別れているらしい。

 飛行機乗り(しかもエースパイロット)の彼女は、飛行機について尋ねると喜々として話をしてくれたが、あまりにもややこしくて最後のほうはニコニコしながら頷くしかできなかった。

 ついでに爆弾や銃は搭載するのかと尋ねたら、「戦闘なら魔法使いが乗って攻撃すればいいのに、なんで重たくなる爆弾とかを積むんですか?」とポカンとした顔で聞き返された。確かにそうだな。


 一方、大型機は魔石動力式と全魔石型だけで輸送目的のみで作られているらしい。全魔力型は大型機は生産予定はない。

 なんでも、全魔力型を操れるパイロットは動力と魔法の両方を賄えるだけの魔力を持つ魔導空挺士だけと限られてくるらしいので、小型機のみ製造しているらしい。

 鼻息を荒くしている彼女には申し訳なかったが、最後のほうの意識は、遠い地平線の彼方の瞬きと区別がつかなくなっていた。


 しかし、魔石か魔力さえあれば二酸化炭素も出さないで飛びまわれるというのは、どれほど環境にいいのか。それ故に、簡単に空を飛び魔法使いたちを容易くどこまでも運ぶそれはどれほどの脅威になるのだろうか。

 手で日光を遮りながら、その青い機体の尾部を目で追った。



 先日、ユニオンによる飛行機の共和国へ技術供与が正式に決定され、例の調査団やユニオンの航空整備士、パイロットなどを交えた話し合いがあった。ルアニサムの調査が済み次第、ユニオンから共和国へ技術者を何名か派遣し、教育をする予定だそうだ。

 人材教育にとどまらず、現在開発されている複座式および単座式魔石エンジン機の設計図、風の抵抗を受けない沈頭鋲の技術やら、偏屈者のバスコがその後に開発した若干オーバーなテクノロジーも提供したらしい。

 だが、より高出力高効率の全魔力型エンジン機の技術提供は、共和国には魔法使いがほとんどおらず、なおかつ試作機でしかないという理由でしなかったそうだ。


 今のところ、共和国ではまだ大量生産をしている気配はない。まだ数日しか経っていない上に、魔石エンジンに必要な魔石がそこまで多くないからだろう。


 飛行機の技術供与について、ルカスは反対していた。だが、エスパシオが共和国の写真などの技術を欲しがったせいで押し切られてしまったそうだ。ルカスもコーヒー栽培を効率化させるための技術を手に入れられた様子で不満はあったものの納得したらしい。


 生産量を増やしたのはコーヒーに限ったものではない。農作物の作付面積をこれまでにない規模で拡大したのだ。それにとどまらず共和国から来た照明を使った屋内生産にも着手し始めたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ