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アトラスたちの責務 第六十六話

「父上!」


「どうしたのかね? このところ声を荒げていることが多いな」


執務室のドアをノックもせず、思い切り開けてしまった。だが、父上は入ってきたのが私と見ると、すぐに穏やかな表情になった。


「父上は、父上は一体何を目的としているのですか!?」


私が執務机に迫っていき、両手を机に叩きつけるようにしながら父上の顔を真っ直ぐ見つめると一度は驚いたような表情をした。椅子を回して私の方へ身体を真っ直ぐ向けると「全てに気がついたかね?」と口角を上げた。


「では、まず、カミーユ」と咳き込むと「君のここまでの答えを聞こうか」と尋ねてきた。


「何から答えればいいのか……。ですが、まず、連盟政府にデノミネーションをさせたのは父上なのですね!?」


父上は目を見開いて止まった。しばらく沈黙した後、手を叩き始めて「御名答」と笑った。


「さすが我が娘だ。銀行家に向いていないのが、実に悔しく、そして、惜しい」


「ここまでの答えは分かりました。そこから先の答えはもう出ているのですね?」


鼻息を荒くしたまま尋ねると、大きく頷いた。


「これからとてつもない金額が、世界中で動き出す。その全て牛耳り、やがて世界の金融を手にする。世界とは、人間だけではない。かつて私たち人間が魔王だ魔族だと罵り見下してきたエルフたちの世界も含めた土地のことだ。人間の世界は狭く小さい。一方で、彼らの世界は広く、ほとんど彼らの物と言っても過言ではない。彼らの世界の金融までも支配しなければ、世界の金融を支配したとは言えない。

世界の価値観は大きく変貌を遂げ、人間・エルフ共栄圏を全て治めることが覇権となった。物流は海運と汽車でカルデロン・デ・コメルティオ。移動魔法でベッテルハイム・ハンドラー。これこそが新たなる、そして、真なる世界のアトラスとなる」


「父上の言う『とてつもない金額の動き』とは、デノミネーションの末の何によって引き起こされるのですか!? 連盟政府の経済的孤立、物資の過剰な流出による不足。まるでその世界の全体の富とは逆行するようなその行いによって追い詰められた連盟政府が何をしでかすか。戦争です! 戦争以外に考えられることがありません!」


「戦争か、なるほど。それも一つの答えだな。おそらく現時点で最も正解に近い答えだ。彼らは倒れてアトラスではなくなった。もはや荷台から落ちたブタだ。出荷されるわけでもなく、ただどこかへ運ばれていく途中で荷台から落ちて道を塞ぐ太った老いたブタだ。他の国々からしたら、邪魔でしかない。戦争という選択肢を選ぶのは、確かに適切な答えかもしれない」


「なぜ選ぶべきではない戦争と言うものが正解になるのですか!?」


「国を排除していく為に手っ取り早いからだろうな。腐っていくだけの国家が放つ、周りを巻き込む停滞、剰え足を引っ張りさえする腐敗臭を最も減らせる最良の手段だからだ。腐った物は焼却するのが適切だ」


「そんな! 連盟政府にも生きている人間たちがいるのですよ!? 何故他人事のようにしていられるのですか?」


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