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アトラスたちの責務 第六十四話


私がめまぐるしく思考を巡らせて、記憶を呼び覚まそうとしている間に、レアはいつの間にか帰ってしまったようだ。


マルタンの国境壁沿いの露店において商品は異様に安く、ダンピングまがいの値段で売られていた。それを良しとしてユニオンの者たちは挙って買っていた。


その市場での値段が安いのは連盟政府内部だけで有効なデノミネーションによるものだ。


あちらで単位の二桁切り下げにより一ルードになったものは、こちらでは百ルードのままだ。つまり、あちらで一ルードで仕入れたものがこちらでは百ルードで売っても、普通のことであり売れるのだ。

多少なり安くしてもかなりの利益を出せる。安さの秘密はそれだ。

売った者は百倍の金額を得る。連盟政府に戻り、それを元手に仕入れて売ればさらに儲けることが出来る。

商売とはそういうものだ。安く仕入れ、必要な者に高く売る。その繰り返しだ。マルタン国境で行われている商売は否定はしない。


個人のレベルではそうかもしれない。だが、それで連盟政府はいいのだろうか。

連盟政府は今教導総攬院(ドゥチェンス)による支配を受けている。教導総攬院は自身の会計をヴィトー金融協会に依頼しているので、国家の金融を扱う手腕など持ち合わせていない。今現在連盟政府の国家金融は全てトバイアス・ザカライア商会に委ねられている。

商会と教導総攬院との関係性は不明だ。だが、教導総攬院は元は政府の一機関なので、円満だとは思えない。おそらく、お互いに互いの欠点を指摘しそれを補完し合えるような間柄ではない。

仮に違和感を抱いたとしても、商会はそれまでの歴史の長さ故に商人としての信頼は築かれており、金庫番を任せることに対する不安をそれ以上に広げるということには至らないのだ。

金融の全ては商会の手の内であり、善し悪しや今後の方針など全ては商会が決めているので、連盟政府ではどうしようもない。


非公式なユニオンとの取引をその商会が取り締まらないのは、例の“グルヴェイグ指令”があるためだ。当初は偽札をユニオンに大量に流れ込ませる為に規制など一切設けず野放し状態にしていた。

それからしばらくして、偽札は精度の高さを理由に連盟政府内部に限定して真札として扱われるようになった。


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