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アトラスたちの責務 第六十二話

父上に一度頭を下げて部屋を後にすると、すぐにレアを追いかけた。


静まりかえった廊下の端に至ろうとしていたレアの背中に向けて「レア!」と呼びかけ「あなた、トバイアス・ザカライア商会と協会の取引に賛成ではないのですか!?」と立ち止まり振り向くよりも先にそう尋ねた。


私が追いつくと「それはそうでしょう」とレアは答えた。


「協会との取引をすることで物流を維持することが出来るでしょうね」


「では、なぜ!?」


「持ちつ持たれつですよ。しかし、商会は完全に協会に寄りかかり、剰え足台にしようとしています。アトラスは世界を支える者。倒れかかったかつてそうだった者たちを協会が支えれば、協会まで倒れてしまいます」


「だからといってなぜ彼らを経済的孤立へ導くのですか!?」


「では、国家予算の規模で偽札をばらまくような者たちと取引をしたいと思いますか?」


「それは商会が……」


商会は確かに偽ルード通貨を刷った。しかし過ちには気がつき、困り果てた末に偽札を真札と同等にした。すると流通する通貨量が増えてしまい、デノミネーションという苦渋の決断をした。確かに全て自業自得である。

だが、偽札は非常に精巧に出来ており、協会の人間ですら判別を簡単にはつけられない。それは協会と商会がある程度の妥協点を見つけたときのための、商会が密かにうっておいた保険なのではないだろうか。

そうであるならば、商会には、どのような形であれ最終的には再取引に応じる用意があったのは間違いないはずなのだ。

話合いがもたれた末での交渉決裂なら、まだ私でも理解は出来ただろう。


だが、実際には今日の最初の一手よりも先に、既に協会は交渉に応じない姿勢だったのだ。


いつからそのような計画であったのだろうか。私は何も知らず、知らされず、知ろうともせずのうのうと過ごしていたことになる。


レアがトバイアス・ザカライア商会との間を取り持ち始めたのはごく最近。間を取り持つためにはそれなりの信頼とつながりが必要だ。黄金捜索後、レアは責任を負わされて監禁され、さらにその監禁状態から人を殺して脱走している。いくら一族の末裔であったり、会長の兄妹であったりとかなりの融通を利かせられる立場とは言え、仲間殺しはそう簡単に許される物ではない。

先ほど偽情報を掴まされていたラビノビッツの話から考えると、レアは情報を流す代わりに商会に再度接近したと考えられる。それはいつからなのだろうか。

もしマルタン事変の直前、ないし直後だったとしたら?


「レア、まさか、あなたが連盟政府とトバイアス・ザカライア商会に何かしたのですか!?」



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