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アトラスたちの責務 第五十七話

「残念ですなぁ。私たち由緒正しきトバイアス・ザカライア商会がここまで下手に出て差し上げたというのに」


「下手ではない。下なのだ。自ら格下に成り下がったのだ」


「商会が協会より下……? 不思議なことを仰いますなぁ」


 ラビノビッツは道化のように言い返し、顎を突き出して不快な笑みを浮かべた。


「恐れながら言わせていただきます。今から千年ほど前に私鋳銭を作ることを領主に任されただけの隻眼の農奴あがりの銀行屋でしかないはずで、ヴィトーなどという姓は譲り受けたに過ぎないあなた方が、ベッテルハイム・ハンドラーとして神代の時代より脈々と伝わる由緒正しき伝統と長い長い歴史を持つ我がトバイアス・ザカライア商会の申し出を何を持ってして断ることが出来るのでしょうか?」


売り言葉に買い言葉。ラビノビッツは協会を侮辱するようなことを言った。言い切った彼は満足げな笑顔を向けている。

しかし、父上は全く動じていない。隠しているのでなく、その侮辱が届いてすらいないほどに、怒りも屈辱も何も感じていないのだ。

止めなければ、止められない。手が震えてきている。それでも動くことが出来ない。


「ベッテルハイム・ハンドラーが神代というのなら、帝政ルーアの歴史は宇宙創成の頃に始まってしまうな。彼らがいなければ消えていたというのに、どの口が歴史を語るのか。

 確かに歴史は長い。無駄にな。しかし、歴史さえ長ければ、今日の行いがどれほど愚かでも優れていると言いたいのか? まぁそうだろうな。自らが正しいと思い続け、世界の流れに付いていけない太った老害のような者が社会基盤の首を握りしめているのだ。それが正しいと言えば正しいと思い込めるが、破滅の未来は決まっているのだな。

それに、ベッテルハイム・ハンドラーの由緒正しき後継者はここにいるレア・ベッテルハイムだ」


父上は黙り込んだ。眉間に皺を寄せ顔を左右に振り、何かを考え込むような素振りを見せた後、「なぁ、私はかねがね尋ねたかったことがある」と話を始めた。


「ここにいるレア・ベッテルハイムは小さく可憐で、とても可愛らしい。それでいて賢く、強い。もし同じ時代に生まれていたら、妻に迎えたいとも思っただろう。

だが、兄上である、兄上であると主張しているイサク・ベッテルハイムは、なぜあのような醜い体つきをしているのだ? まるで皮膚病を患って野山の木々に身体をこすりつけて森を枯らす太ったイノシシではないか。

イサク・ベッテルハイムには、本当にフェルタロスの血が流れているのか? レア・ベッテルハイムのように、移動魔法や髪色などその身に宿る確たる証拠はあるのか? 名前だけを継いでいる貴様ら商会に、マジックアイテムなしで移動魔法を使える者はいるのか? それでもトバイアス・ザカライア商会と名乗れるのであるなら、ユニオンで移動魔法のマジックアイテムを持つ者にトバイアス・ザカライア商会を名乗らせようと思うのだが」



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