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アトラスたちの責務 第五十五話

「わたしくはラビノビッ」と言いかけたのを父上は「ベッテルハイム! レア・ベッテルハイム!」と大声で遮った。

「いいかね?」と呼ばれたレアは再び一歩前にでると「はい、こちらに」と返事をした。


「私はベッテルハイム・ハンドラーと懇意に取引をしている。いくら仲が良くとも、礼節を保ち、公私混同を避けているつもりだ。その私がベッテルハイム・ハンドラーととても大事な話をするとき、誰が私と話したかね?」


「私、レア・ベッテルハイムでございます」


「そうだったな。では、君はベッテルハイム・ハンドラーで何をしているかね?」


「ベッテルハイム・ハンドラーの経営しております。正式な従業員も十人以下とまだまだ小規模ではありますが、私は代表を務めさせていただいています」


なぜレアを話の中に呼び込んだのだ。私は父上とレアの顔を交互に見つめた。

父上の表情からは先ほどの笑顔は無くなり、無表情になっているのだ。


「そうだったな。少人数とはいえ、たった数人とは思えないような働きぶり。数を誤魔化すようなことはせずに会計まできっちりとしているので信用に値する取引先だ。国境での闇取引の管理という、些か危ない橋を渡らせているにもかかわらず、文句の一つ言わず動いてくれる。信頼に値するからこそ、そのようなことをさせているのだが」


父上はゆっくりとラビノビッツの方へ顔を向けて、小首をかしげた。


「ところで尋ねるが君は、なんと言ったか、トバイアス・ザカライア商会の会長か?」


ラビノビッツは応じるように笑顔を作った。


「恐れながら申し上げますが、わたくしめは商会会計部門(イーシュ・ケリヨート)のラビノビッツでございます。商会長はご存じかと思われますが、イサク・ベッテルハイムでございます」


「つまり、お前はイサク・ベッテルハイムではないと」


父上は眉間に皺を寄せた。これはまずい方向へと向かい始めたのを感じた。

だが、私はここで割って入ることが出来ない。父上は私を見ていないが、動くことを許さぬ圧をかけてきている。全身の皮膚で、産毛が逆立ちざわめくの感じる。



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