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アトラスたちの責務 第四十五話

クロエは質問を質問で返してきた。間違いない。何か知っている。シスター・マンディアルグとディアーヌちゃんのために、食らいついてでも情報を入手しなければいけない。


「その者から連盟政府の内部、特に戦線地域で保護が必要になった孤児の行方不明事件が起きていると聞いていたので。もし何か情報があったら、些細なものでも教えて欲しいとも言われていたので伺ったのです」


「何か情報……。例えばどのような情報ですか? もう少し具体的にお願いできますか? ボンヤリしているとこちらも返答に困りますので。その者というのも誰のことだか」


「ナディーヌ・マンディアルグという方ですね。“督僧(とくそう)顕権(げんごん)真伝会(しんしんでんかい)”の“世界樹の方舟(ミストル・アーク)”派の巫女みたいな立場の者です。数週間前に他の代表の者たちと本社ビルに訪れたときです。どのようなものでもいいと仰っていました。

例えば、そうですね……。孤児の行方を探している者がいるといったものでしょうか? 身内がいない孤児の行方を捜す者は、慈善家か変わり者ですからね」


クロエは先ほどよりも沈黙をさらに深く落として寄越してきた。混じっている高音のノイズで耳の奥が痛くなるほどだ。

しばらく黙り込んだ後、「どうやら、あなたにお話しできることは無いようですね」と低く脅すような声でそう言ったのだ。


「何かご存じですね?」


「いえ、お話しできることはないようです。ご協力に及ばず、申し訳ございません。それでは、ごきげんよう」


まずい。切られてしまう。こちらが情報を渡すだけ渡して逃げられてしまう。「待ちなさい!」と声を荒げて呼びかけた。


「子どもが危険な目に遭っているのに、あなたは無視されるのですか?」


繰り返し尋ねたが、そのときには既に回線は切られていた。

受話器からは回線遮断の機械音が連続して聞こえている。


クロエは子どもの誘拐について何かを知っているような物言いをした。彼女はディアーヌちゃんと直接の繋がりはない。だが、私が今言ってしまったことで何かを勘づいたかもしれない。


おそらく高音のノイズは傍受されているときに発生するものだろう。何かの単語――おそらく孤児という単語に反応して傍受が開始されていたのだ。


特定が困難な掲示板経由の複雑回線にまで傍受の手を伸ばしてきているということは、督僧(とくそう)顕権(げんごん)真伝会(しんしんでんかい)は必死になっている。

ディアーヌちゃんが危険な目に遭う可能性がかなり高くなってしまった。



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