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アトラスたちの責務 第四十三話

「依頼は依頼できっちり完了させていました。子どもが迷子になっているのですよ? 当たり前でしょう。ただ、シバサキとは捜索を行っていません」


「捜索は一緒に行っていない?」と裏返った声で確認の復唱のような返事をした。


「では、そのとき彼はどこで何をしていたのですか?」


「知りませんよ。依頼を効率的に行う方法を思いついたとか言って、カフェに私たちを呼び出してノルマだけを課してどこかへ消えていましたから。週に一回くらい進捗報告会と銘打って集めて、稼ぎが少ない、もっと依頼をこなせ、僕がいないからと言ってサボるな、とどこから出てくるのか文句ばかり言ってましたね」


「いつまで経とうとも、どこへ行こうとも、本当に何にも変わらない方なのですね。同情しますわ」


しらを切っていると疑われると思ったが、あっさりと受け容れられた。


「答えていただけたので、何が聞きたいのですか?」


少しばかりがっかりしたような声が聞こえた。クロエの尋ねたいことはその程度で済んだようだ。


「ではこちらからの質問です。督僧(とくそう)顕権(げんごん)真伝会(しんしんでんかい)の聖職者たちが会計の件でしばしば顔を出されるのですが、その帳簿の記録に因れば、会の口座からケイ・ワタベ、つまりカツトシ・ワタベの口座に定期的にいくらか流れているのです。また外貨での預金も額が普通ではないのです。金融協会としても犯罪などに使われていると警戒せざる得ないのです」


「金融協会は潰れたのではなくて? それでどれほど迷惑を被ったか」


クロエはまたしても挑発するようにキューディラ越しに言ってきた。


「と、意地悪言うのは止めましょう。教導総攬院主導で開かれた十三采領弁務官理事会で可決された宗教組織税制優遇制度維持をご存じですか?」


「ええ、話に聞く程度ですが」


教導総攬院(ドゥチェンス)の院長は、督僧(とくそう)顕権(げんごん)真伝会(しんしんでんかい)の教祖の天尊(アマタケルノ)渡部命(ワタベノミコト)という男なのです」


「アマタ・ケルノワ・タベノミ・コト……?」


クロエはクスクスと笑った後、「その言い方は正しくないです。私も当初分からなくて、曾祖父に話を聞きましたわ。正しくはアマタケル・ノ・ワタベ・ノ・ミコトという音節で読むそうです」と訂正してきた。


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