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アトラスたちの責務 第三十三話

口座という名前だが、貸金庫の場合もある。その中に何が、それとも、いくら入っているかは上級行員や役員以外は知り得ない。そもそも口座の有無さえも、本人が言わない限り秘密にされる。


ミラモンテス氏ともなればあって当然という認識がある。そこから足が付く可能性はある。ミラモンテス氏は先の談合で過敏になっているのだろう。それ故に、現ナマでの引き渡しをしているのだ。


私は頭取の娘ということで半ば縁故採用で役員補佐と言う立場に就いているが、突き詰めれば一銀行の行員にすぎない。さらに言えば、どちらかと言えば仕事場は現場であり、銀行内ではない。

扱うべきはお金だけであり、そのお金がどこへ流れようとも関与すること出来ない。出来ないのだ。


上客に渋い顔をされたことを父上に咎められることはなかった。「ビジネスライクでいい。以降気をつけたまえ」とだけ言われた。

それ以降、氏やメイドたちを困らせることは特になかった。


マルタンでは次期市長が二週間ほど前に決定していた。

市長選では三人の候補が挙がったが、副市長以外の候補がマルタン亡命政府の顧問団だったことが判明した。

二人の候補は選挙期間が後半になると突然連立を表明し、票を合算し共同市長となると宣言した。


しかし、ギヌメール候補が遊説中に何者かの襲撃に遭い負傷し、選挙戦を離脱することになった。その直後、顧問団本人であることと亡命政府内部で行っていたことが公になった。

おそらくこれは連立の中でどちらが優位性を持つかで内ゲバを起こして潰し合ったのだと私は見ている。

もう一人のルジャンドル候補は出馬を維持し投票日が訪れたが結局得票率が振るわず、結局副市長が圧倒的にな得票差をつけて当選した。

ルジャンドル候補は選挙戦後に逮捕され、元顧問団であることについてメディアは騒ぎ立て続けたが、その容疑については取り上げることは無く、次第にメディアも飽き始めて気がつけば下火になっていた。


マルタン事変はある意味で本当の終焉を迎えたのだ。


だが、その副市長の当選が決まった後に私たち協会の状況は大きく変化してきたのである。


以前は週に一度あるかないかだった融資依頼が、三日に一度と言うペースになったのだ。

そして、額が多くもなってきている。私の一存では動かすのも大変なほどの額――指の数では足りないほどを提示されることもあるが、何とか答えていた。



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