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アトラスたちの責務 第二十五話

トバイアス・ザカライア商会は相次ぐ連盟政府からの分離独立により、自らの商圏を次々と切り取られていった。ユニオンにはカルデロンがあり、友学連はユニオンの属国となりカルデロンの商圏となり、北公とは絶縁。建国と同時に北公が理事国を務める北部辺境(シーヴェルニ)社会共同体(・ソージヴァル)に加盟したルスラニア王国という未知で広大な商圏を得ることが出来なかった。超巨大なマーケットである共和国は、連盟政府の和平交渉の泥沼化により未だに具体的な参入の話も出来ていない。その間に、ユニオンと深い親交を持つようになってしまった。

残されたのは連盟政府だけである。だが、連盟政府は依然としてエノクミア大陸では大きく、商圏の規模としては小さくはない。

しかし、商会自身が連盟政府には不信を抱いているのも事実。これまで何度もマジックアイテムも含めた移動魔法の扱いについてで衝突を繰り返してきていた。さらに最近では、マルタン丘陵の戦いの際に、移動魔法のマジックアイテムを持つ所属商人の戦死が発表された。

商会は、自ら身を置いている国家に対して、強烈な不信感を抱いているのだ。

そのような状況で彼らがどのような行動に出るか、ある程度は予想が付く。それは外貨の獲得なのだ。


「だから、指令のターゲットがユニオンであるというのは違和感を覚えるのだ」


その証拠としてあげられるのが、マルタンで行われている取引は、現在のルード通貨と今後流通するユニオンルードで半々での決済としている。

予めルードでの全額支払いをし、発行され流通した際にユニオンルードへの換金を行うそうだ。質が悪いのは、商品は割安であり、さらに換金した際にレートが特殊で、元のルードの半分以上が戻ってくると言う仕組みにしているのだ。


「それは確証の無い取引で不正な物ではないのですか?」


「元の取引が不正であり、闇の中で行われているので取り締まりようがないらしい」


「ユニオン政府は知っているのですか?」


「もちろん伝えてある。失礼だが、こちらは大統領府に直接伝えさせてもらった。だが、あえて対策はしないようだ。君が知らないのはそういうことだろう」


私たちは連盟政府では国営ではなかったが中央銀行のような役割をしていたが、ユニオンに移ってからはユニオンの中央銀行よりも桁違いの規模の大きさを誇るだけのメガバンクにすぎない。私たちに伝えられないというのは充分に考えられる。


シローク氏の話はさらに続いた。


外貨獲得というので、クライナ・シーニャトチカの乾燥地帯にある共和国の基地にやたらと物を売りに来る者たちがいるそうだ。商会の関係者かどうかは分からないが、共和国のエケル通貨を獲得する為であることに間違いはない。ルード通貨よりもエケル通貨での取引を持ちかけてくるからだ。

エケル通貨は現在の世界で一番強い通貨だ。不足する水、果物、酒、タバコなどを兵士に大量に売りつけるようとしているようだ。そこの基地への補給に問題はないが、やはり食べ物に関しては嗜好品が少ないので取引に応じてしまうケースもあるそうだ。



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