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アトラスたちの責務 第二十三話

「さて、気楽に、とはいかないが本題に入ろう。我が国の造幣機械が持ち出され連盟政府の者の手に渡ったのは君の父上、いや失礼、ロジェ頭取から聞いて知っているはずだ。持ちだした者は金融省の職員で、魔石カルテルのとりまとめ役企業ウルバネツ貿易の代表取締役の身内だ。おそらく確立されていた魔石入手ルートで人間側との接触を利用したのだろう。人間側で魔石の元締めはヴィトー金融協会と言う話を聞いているが?」


シローク長官は確認をするかのようにそう尋ねてきた。


「魔石はとれる土地が決まっていまして、土地管理も委託されている関係で協会が主体となって取引をして商会に卸していました。ですが、ご存じの通り、エノクミア大陸ではどこででも満遍なく採れるので全てを把握しきれてはいませんでした。定められているルールでは、個人での利用に限り、指定採取地外、つまり管理外で採取された検品外の物の使用制限をしていません。売り買いも黙っていれば特に介入されると言うことはなかったので、事実上野放し状態でした。商会は卸しているもの以外も扱い、個人的に売買していました。共和国で明確な利益を出すほどの大量購入、以前お手伝いさせていただいた金融省長官選挙の際の十倍程度となるとさすがに目を付けられるので、そのカルテルは各地の商人などから少量ずつ集めていたのでしょう。少なくとも、協会が把握していた共和国の魔石カルテルにウルバネツ貿易の名前はありませんでした」


「ウルバネツ貿易は、確かにアルゼン氏が再編したカルテルの一つのまとめ役だが、あまり目立つ会社ではなかったからな。あくまで機械の流出には協会は関係ないということだな?」


「そうです。連盟政府の造幣は発行当初から私たち協会が行っていました。印刷自体に商会は無関係ではありましたが、二百年前の導入時には商会との関係も良好であり、流通の兼ね合いもあって関与していました。その長年の実績により造幣技術に関しては高度である自負があるので、新紙幣発行となれば、印刷機械も自らの手で開発を行うでしょう」


「随分前から変わっていないとは思っていたが、二百年も紙幣を改良や刷新していないのか?」


シローク氏は渋い顔を見せてきた。二百年間同じ紙幣を使うというのは、時代の変化に合わせていないような印象が確かにある。だが、それで成り立つ方法は確立されていた。


「紙ではあるので劣化はしますから新しく刷り直すことはしていますが、基本的な形は全く変わっていません」


「今さらだが、信用に足るのか?」


足りると、私は言える。その方法があるからだ。


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