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アトラスたちの責務 第十五話

「私は信仰を持たないが、誰かのそれを否定することはしない。神は確かにいるのだよ。人が理想を抱けば、その理想の中に神が住まうのだ。しかし、もし、誰の中にも等しい姿で共有され、感知できるこの現実に神がいるというのなら、人間やエルフの目に見える形でいるはずだ。それは誰もが求め誰もが毛嫌う金を依り代としている。金とはいわば、現世に溢れた神の血液なのだ。何よりも醜く、最も愛すべきそれこそが全てなのだ」


理解が出来なかったわけではない。愚かな私にも分かるように父上は正しく言ったからだ。


父上は金融を司る者を統べる者。戦士が戦う者であるように、父上は金融の守り手なのだ。

私にそれが向いていないことを昔から気がついていたのだろう。だから、私は戦いの場に出る者として育てられた。確かに父上は前妻の子である長男を大事にしているが、無能な子など排除してしまおうというわけではないというのは分かる。父上が初めて私を叱ったときの声色、仕草、表情で、たったそれだけですぐに分かった。

私が戦いの場で若くして命を落とすことなど有り得ないと信じ、正しき場所に私を向かわせたのだ。


そのように育ってきた私が、あれが正しいこれが正しいと何かを言うことはできない。


私が考えていることなど、戦うことに重きを置いている者の浅知恵や、行員として働く上で流れている表面的な流通を見ただけでの判断でしかないと突き放している――わけではない。

もちろん、私のフィールドは戦場であり、父上のいる場所とはフィールドが違うというのは事実であることは間違いない。


しかし、現実はもっと別だ。

私がこうじゃないと言ったものは、やがては修正されるか、それとも予定調和のどちらかなのだ。

なぜなら父上は、正しい正しくないの手前、事象という川の源泉にいるからだ。父上こそが金融の流れの最初の一滴であり、こう流れるべきと言えば、誰かが流れの途中にある堰の善し悪しを議論し変えようとも、必ずそう流れるのだ。


私はイズミと共に共和国へ行き、変わり始めた戦場を駆け抜けて世界を知ったつもりだった。しかし、世界はまだ広く、それを支える(アトラス)は得体の知れない存在だと言うことを理解した。


「父上」と私は思わず呼びかけ「この先には何があるのでしょうか?」と早口で尋ねてしまった。


もはやレームダックとなった連盟政府の根幹へと成り代わった宗教団体の金庫番を、ヴィトー金融協会が担うことには大きな意味があるに違いないのだ。

父上は協会が覇者となる未来の足がかりを整える為に、私をユニオンのまだ支店だったここへ左遷した。

その先で待っている、父上の中に形としてある結末というものが気になって抑えることができず、私は尋ねたのだ。


脈絡がない問いかけに、父上は珍しく驚いたような顔になった。


「ほう、賢い娘だな」


だが、父上は微笑みを浮かべ、私を褒めたのだ。

私が何を尋ねているのか、そしてその問いかけに至るまで私が巡らせた思考を、瞬時に理解したのだ。


「私は君のような娘を持てたことが誇らしい。優しく真っ直ぐな性格の持ち主でもある。だが、それが銀行家に向いていないというのが、たった一つ、残念なところだ」


「それは自分でもわかっています。あなたの娘として、あなたのヴィジョンを教えていただけませんか?」


父上は「なに、大げさなことではない」と誇らしげに目を細めて笑った。


「前にも伝えたとおり、金融で世界の覇者になる。最後はそれだけだ。その道が険しくはなる、それだけだ」


争いは既にあちこちで起きている。ヒトもエルフも大勢が犠牲になっている。

今以上に厳しくなると言うのだろうか。


それを受け容れられるのだろうか。



2025/04/21

いきなりごっそり更新しました。長いこと更新が止まってますが、作品自体は書き終わっています。

書き方・文章・表現が気に入らないので放ったらかしにしていました。誰も読んでないだろうけど、申し訳ございません。

短く簡潔に無駄な事を省くだけ省いてセルフリブートします。これは長く書いていたので消してしまうのは何だか勿体ないので残しておきます。


そのときまで、またね。

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