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アトラスたちの責務 第十二話

後ろめたさに苦しくなり、持ち上げたコーヒーカップの水面の自分の顔と父上の顔を交互に見ながら、黙って頷くだけにした。


「いくらあったと思っているのだ」と父上は頭を抱えてため息を溢した。


「君は母親と似てお金に頓着しないな。今となってはどうしようもない。私たちからすれば確かに端金だ。だが、もう少し大事に使うようにしなさい」


「ごめんなさい」としょぼしょぼ謝ると、父上は「気をつけなさい」と叱るとコーヒーに口を付けた。

こうして叱られたのは、よもや生まれて初めてではないだろうか。

父親らしい一面を意外にも思ったが、それよりも金額がどれほどだったのだろうか。

父上がいくらあったかと反省を促すと言うことは、かなりの額であったのだろう。それを彼女は寄付をしたと言った。

彼女は派閥の中にとどまらず、教導総攬院の幹部にまで短期間で入り込んでいた。ミストルアーク派は中核宗派とまで言っていた。ミストルアークは私が誘拐されたときに初めて聞くような名前で、新興宗教であるのは間違いないはず。

まさか、さらにミストルアークの名を付けて、全額を教導総攬院(ドゥチェンス)に寄付したのではないだろうか。


「あの、彼女は寄付をしたと言っていましたね。その、多分、ほとんど全額を……」


父上はコーヒーの匂いを嗅ぐような仕草を見せた後、「それが彼女なりの金を大事に扱う方法だったのだろう」とカップをテーブルに静かに置いた。


「確かに金は彼女のものですが、闇雲にすればいいというわけではないはずです。彼女の場合は寄付をして、教導総攬院の上層部に認められて内部での地位を得ることが出来またようですが」


父上は「なるほど」というと秘書に向けて右手を小さく挙げた。秘書はそれを見ると、片付けを中断して小さく頭を下げて部屋を後にした。


ドアが閉まりきると同時に「カミーユ、君は宗教における寄付はあくまで寄付だといいたいのか。では、宗教法人に大事なものは何か分かるかね?」と尋ねてきた。


「信仰心と信者の数ですか?」


「信者の数は確かに大事だ。だが、もう半分は違うな」



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