アトラスたちの責務 第六話
その次の週明けの正午に大統領府の記者室にてマルタン亡命政府内部で行われていたことについての記者発表があった。マルタンを治めていた顧問団たちの悪行が白日のもとに曝されることとなった。
それが終わると続けて、マルタン復興事業の談合についての記者会見が行われた。会見ではミラモンテス氏の談合容疑を認め、復興事業を細分化し再び入札を行うことが伝えられた。
現在混乱状態に陥っているマルタンの収拾をするために、ミラモンテス氏および現市長はすぐに解任されることはなく、マルタン復興事業のある程度のめどが付いたときに改めて処分を下すとされた。
その直後にユニオンを揺るがす事件が起きた。マルタンの市長が暗殺およびルカス大統領の暗殺未遂事件が発生したのだ。
この一件により、ミラモンテス氏や市長などが関与した談合事件は世間からの関心を抱かれなくなり、次第に闇の中へと消えていった。
市長代行を取り仕切っていた副市長がそのまま市長になると思われたが、急遽市長選挙が行われることになった。
突発的な選挙にもかかわらず、副市長以外にきな臭い候補が二人も挙がった。二人の候補は意外にも支持者が多く、一度は当選も騒がれ、メディアの取材も積極的に受けていた。
選挙期間中にマルタン市長暗殺の犯人は逮捕された。
大統領府の受付嬢だったのだ。勾留中に妙な言葉を書き残し、その直後に自殺を図ったそうだ。現場にいたわけでも、調書を読ませて貰ったわけでもないが、「殉教者」と言う言葉を使っていたという話を聞いた。何やら宗教がらみということで、私もいい気はしなかった。
市長が暗殺されて混乱が起きていたマルタンで、営業を早期に再開していた小売店を中心に偽札が大量に使用されるという事件が起きた。父上から聞いていたとおり、偽札が相当数流れているようだ。
早く営業を始めれば需要が見込める。そこに集まる多くの客に偽札を掴ませる為に使用されたという見方が強い。
ユニオンの国政がめまぐるしく動いている背後で、金融協会は平常運転をし続けていた。
だが、ある事件の取り調べが行われる際に協会側の代表者として私がマルタンに向かうことになった。




