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アトラスたちの責務 第五話

休んでいる暇などない。父上が私に別命あるまで待機を命じたのは、無理矢理にでも私を休ませる為ではなかったのだ。

事態はマルタン事変が終われば次第に収束に向かうと言うほど甘くはなかった。


マルタンは国境の町でもあり、早期復興が求められていた。

その復興事業で不正が行われたのではないかと声を上げる者がいた。どこから起こったか分からないその疑いの目は瞬く間に広がり、そして、内々に調べられていくうちに疑いではなく、実際に談合が行われていることが明らかになってしまった。

マルタンのコマースギルド代表であるミラモンテス氏が現地の建築業者と談合を行っていたのだ。

調査を行ったのは民間であり、正式な逮捕権を持つ警察組織ではなかった。しかし、声は大きく警察組織の介入が余儀なくされ、近日中に談合容疑でミラモンテス氏が逮捕されるという可能性が出てきたのだ。

協会は人間世界では最大の金融業であり、金の流れるところ全てに耳がある。その話は公になるよりも早く協会の耳に入った。


同時期、ミラモンテス氏の談合容疑に氏の旧知の友人であるルカス大統領の口利きがあったのではないかという噂も流れていた。

その話を聞いた日の夜、私はラド・デル・マルの高級住宅街にあるヴィトー家の豪邸へ母上に顔を見せる為に夕食を食べに来ていた。

これまでほとんど会うことがなかった父上だが、本社機能のラド・デル・マルへの移転前後から会う機会が増えていた。親子とは言え父上も母上も雲の上の人であり、会うことは滅多になかったが、仕事の関係で顔を合わせることで懐かしさでも出たのだろう。母上に呼び出され家族で食事を共にしていた。(その場に顔を出した子どもは私一人だった。兄、姉、弟たちは皆忙しいそうだ。尤も兄妹仲はすこぶる最悪なので、本当に暇なのかは不明だが)。


食後、私の部屋として作られた一室にメイドと共に向かう途中、父上はメイドを呼び止め、私共々父上の書斎まで行くことになった。メイドと父上の話は、予定についてと大したことではなかった。

だが、父上の書斎にある大きな事務机の隅にルカス大統領の個人の物まで含めた会計記録とマルタン復興事業での入札の記録が堂々と置かれていたのを見かけた。不用心だなと思いつつも、深夜に何か仕事でもするのだろうとそれには手を付けずにしていた。



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