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アトラスたちの責務 第三話

「ここはもうサント・プラントンではなかったな。反体制的なことを話すときに包み隠す必要など無い。父と子、血の繋がった親子水入らずの会話が出来るな」


グルヴェイグ指令とは、トバイアス・ザカライア商会が秘密裡に行っている作戦の一つである。

それは黄金捜索で現在の北部辺境(シーヴェルニ)社会共同体(・ソージヴァル)になる前の北公とブルゼイ族とビラ・ホラの権利を争い、失敗して捉えられた後に看守を殺害して脱走したレアの口から語られた。


その作戦というのは、ルード通貨の対外的信用を下げ、最終的に覇権を握ろうとしているユニオンの地位を墜とそうとするものである。

対外ということで共和国や北部辺境(シーヴェルニ)社会共同体(・ソージヴァル)という他国と取引を積極的に行っているユニオンへのダメージを狙ったものだ。


通貨の信用を貶めるにはどうすればいいか。やり方自体は実に単純である。

貨幣の真贋が定かではないように疑いを抱かせれば良いのだ。つまり、大規模な偽札流通作戦だ。


連盟政府内部で偽のルード紙幣を大量に擦刷り、難民エルフや国外脱走を図る者、或いはそれに偽装させた者に持たせて、不法に国外に出国させてユニオンをはじめとした連盟政府外部で使わせる。それを繰り返し、ユニオンに偽の紙幣を蔓延させて金融的価値を下げることを目的として行われている作戦だ。

しかし、偽札が出回り始めているということにユニオン政府は早い段階で気づき、それに急かされる形でかねてから検討されていたユニオンの独自の通貨発行を急いでいた。

当初、中規模の犯罪組織による犯行だと思われていたが、マルタン事変の直前に商会を追われてユニオンに逃れてきたレアとラーヌヤルヴィによって、それが商会主導で行われていたという情報がユニオンにもたらされた。


中、小規模の犯罪組織が作り出す程度の枚数では経済は混乱に陥ることはない。しかし、商会という国家クラスの組織が偽札を無制限に発行しているとなると、無視できる程度としてまとめることは出来ない。


「今後非常にまずいことになると思いますが、大丈夫なのですか?」


「これは非常にデリケートな問題だ。その“グルヴェイグ指令”が発動されたとき、我々はまだ連盟政府の中にいた。しかし、金融に関する行動をとったにもかかわらず、商会は報告を一切してこなかった。偽札を流通させるなど報告できるわけもないといえばそうだ。一方、こちらから偽札流通について事実確認を行うことも出来ない。三機関である我々協会と商会は互いに独立していたからだ。行動についてあちらから報告を受けることはあっても、こちらから問いただすのは越権行為であるからだ。問題が起きたと知らされたのはレア・ベッテルハイムの報告を受けてからだ。だが、手はすでに打ってある。問題は起きているが、時期に収まる」


「父上、いえ、頭取はどのように偽札流通について知ったのですか?」



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