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深淵の先 第二十五話

天井に打ち付ける雨音は、金属の板の上に無数の胡桃を落としたような強烈なものになっていた。

フロントガラスに打ち付ける雨は視界を遮り、ときどき目の前を通過する黒い棒によって視界を取り戻す。取り戻した視界も青白く霞んでいる。


ボンヤリと見える外は、まばらになっていた畑も放置されて荒れ果てており、茂みとなっているものは周囲の草むらと区別が付かなくなっていた。それからもしばらく進み、道も轍の水たまりで凹凸だらけになると、前方にこんもりとした森が見え始めた。

先ほどロフリーナで見た、地図に上に置かれた角砂糖の中心にある不自然な森。以前、そこには何かの施設があると、聞いたことがある。実際に訪れたことはなく、話に聞く程度でしか知らない。


「着きましたよ。私が送れるのはここまでです」


ムーバリはそう言うと、森の手前で車を停車させ、「では、お気を付けて」と運転席から笑顔で手を振ってきた。


「ちょっと待ちなさい。移動魔法のマジックアイテムなんか持っていない私をこんな土砂降りの田舎に放ったらかしにして帰るつもりですか?」


「いえ、待っていますよ」とハンドルに乗せていた手の上に顎を載せた。そして、指先を手持ち無沙汰のように動かした。


「何があるか、私も知りません。さっきも言ったとおり、最近までこの辺は私有地で、地権者が立ち入りを拒否していたもので。田舎なので政府も無理に入り込む必要は無いと放置していました」


「今はどうなっているのかしら?」


「早雪が終わる直前くらいでしたかね。地権者が突然失踪して政府の管理地になりましたので、長いこと放ったらかしですが、まぁ大丈夫でしょう」


「心強いですこと」


フードを被り車から降りると、先頭についているライトが雨粒の影とライトの熱で立ち上る湯気の先に森を照らしていた。

だいぶ鬱蒼とした森だが、その一部が切れている。そこに向かって細い轍が何本か伸びている。車のタイヤと見比べてみたが、明らかに馬車のものだ。


このままでは濡れ鼠になってしまう。森の中へ入ってしまえば多少は雨を避けられるだろう。



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