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深淵の先 第二十四話

「鉄道敷設の時に土地で少々色々と揉めまして。それ以降、土地は厳格な管理がなされるようになりました。地権者が正式に政府に駆除依頼を出さなければ、なかなか手を出せないのですよ。職業会館で商会によって行われていた依頼管理が北公政府に移管されて、非合法な依頼の取り締まりや安全確保について厳しくなったのもあって、簡単ではないのです」


「笑えないわね。人間の生活を阻んできたはずの魔物を狩る為に人間の許可がいるなんて」


「北公はシンギュラリティを迎えた魔法単体使用から科学と魔術の応用の時代が訪れましたが、連盟政府同様に魔法が力の象徴と未だに結びついていて、所有する土地が権力に結びついているといえばそうですからね。連盟政府の土地管理方法さえ雑に思えるほど厳格になったのです。問題はそれだけではないのですよ。その魔物たちは魔物にしては妙に賢いようで、畑の罠を解除して農作物を盗み出した後に、罠を起動前の状態に戻しているのですよ」


「つまり、知恵を持つものがいるということですか」


「それもかなり高度な、ですね」


魔物の中でも比較的に高度な知能を持つ種類はゴブリンやオーガなどで、彼らが高度な知能を持つが故に人間に疎まれ、今では絶滅寸前になっているはずだ。しかし、知能と言っても火をおこせるかどうかのレベルだ。火をおこす以上に文明を築いた人間によって設置された罠を解除し、さらに元に戻すとなるとかなりの高度な知恵を要求される。火をおこすというのは文明への第一歩ではあるが、少なくともこの二百年彼らに知識の変化はないとされている。


「被害は農作物にとどまっています。負傷者なども出ていません。範囲も限られていますし、あまり行政も具体的に動いてはいない状態です」


ムーバリは「あ」と言うとドアにつけられたレバーをくるくる回し始めて窓を閉め始めた。


「ついに雨が降ってきちゃったみたいですね。さっきの農家さん、大丈夫でしょうか。クロエさん、そちらの窓も閉めた方が良いですよ」


「天気が良いんじゃなかったのかしら?」


私も見よう見まねでレバーを回し、窓を閉めた。

すぐにフロントガラスに吹きつけ始めた雨は斑になり、やがてまとまりガラスを這って下へと流れ始めた。

黒い雲の下は暗闇で車内も暗くなり、やがて進むべき道も見づらくなるほどになっていった。


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