表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1748/1860

鵰の飛翔 第九話

だが、問題は量産するだけでは解決しない。強い武器、便利なモノがあったとしても、使いこなせる者がいなければ無用の長物だ。


「ところで、ムーバリ」と閣下は思い出したようになりミラーガラスの方を指さした。


「先ほど“得られた供述”と言っていたな。これまでの話は見た目だけでの話だった。このヴァンダーフェルケ・オーデンの男が何を言ったのかね?」


「そうですね。先ほど供述と言いましたが、この場で直接聞いたわけではないのです。マルタンの市街地でイズミさんたちと行動したときに、連盟政府の別働隊とも協力がありまして、そのときに気になることを言っていたのです。それについて飛行機の中で操縦しながら色々尋ねたのですが、そこで気になることを言ったのです」


「連盟政府の別働隊とは何だ? 現場で協力するような見解の一致があったのか?」


聖なる虹の橋(イリスとビフレスト)のクロエですよ。イズミさんがノルデンヴィズのロフリーナで彼女と密会した後、マルタンに入るときに協力させたみたいなのです。彼女は皇帝を殺害されては困る立場でした。それを利用して手伝わせたのでしょう。イズミさんがアスプルンド博士からサイドカーと機関銃を奪ったでしょう。あれがそうですよ」


「何ともややこしいな」閣下は顔をしかめた。


「連盟政府はマルタンを取り返すつもりでしたが、内部で方法が割れていたのでしょう。皇帝を懐柔して入り込むか、力によって奪取するかでまとまることはなかったようです。懐柔策が有利でしたが、アニエス下将、いえ、アニエス陛下の最後の行動である亡命宣言と告発により、どちらも覆されてしまいましたが」


「元下将にもイズミ君にも聞かなければいけないことがあるな。元下将はユニオンに勾留中でしかたないとしても、彼の方は今どこで何をしている?」


「共和国の共和制記念病院のどこかに入院しています」


「また怪我しているのか。だが、我々は彼に少し甘過ぎたかもしれないな。こちらで指名手配しておこう。アスプルンド博士の恐喝罪と武器の窃盗罪だ」


「随分、軽い罪で手配ですね。彼はお尋ね者になるのが趣味なのでしょうかね。本題からずれてしまいますね。とりあえず、ここの彼の話を聞きましょう」


大きな四角い強化ガラスの方へと近づいた。こちらからは見えているが、あちらからはミラーとなっておりこちらの様子はうかがい知れない。

男は青白い照明を受け、全身が青みがかった状態で椅子に座っている。だが、意識はないのか、口を開けて顔を天井に向けている。


「死んでいるのか?」


「いえ、死んだように眠りこけているのでしょう。飛行で魔力を消耗しきって意識がありません。私が半日近くもぶっ通しで飛ばせ続けたので。彼にも悪いことをしましたよ。とはいえ、二、三時間ほど眠っているので、会話を出来るほどの体力は戻っているでしょう」


見張りの兵士に「見張りの者、彼の目を覚まさせなさい」と指示を出した。するとその兵士は敬礼すると、目の前の操作盤の右上にある青いボタンを押した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ