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秋霖止まず 第五十二話

翌日の朝刊の一面に私の写真がでかでかと載った。(悪意のある写真を載せてくれと言ったが、それにしても酷い写真だ。フラッシュのたきすぎで青白くなった顔に帽子で影が落ち、まるで血色の悪い極悪人ではないか)。

見出しは“権力志向の皇帝陛下。マルタン市長選への介入を示唆”となった。

記事では、

『マルタン事変はまだ終わっていない。本紙独自取材によると、皇帝は近日行われるマルタン市長選へ介入を画策しているようだ。皇帝という立場ではないが、市長を自分に近しい者を据えることにより市政への積極的な関与を試みている。皇帝陛下は自らを票田であると豪語している。確かに、マルタンが亡命政府に占領されていた時期に利益を生み出した者は少なくない。そう言った者たちの多くは市政には興味を示さず、自らの利益のみを考慮している。これまでは棄権をしていたが、再び利益を得られるということで投票に向かう可能性が高い。その者たちの票が集まることで皇帝自らが推す候補を当選に導こうとしている。マルタンの暗黒時代は再び訪れてしまうのか。』

となった。


マリナ・ジャーナルの言うところの私の推す候補が当選した場合に、大統領権限が拡大される、とまでは書いていなかった。それはそれで別の反発を生む可能性があるからだ。


「さすがプロですね。これで私はばっちり悪役ですよ。さて、次はどう致しましょうか」


「二人への面会だな」


「あなた方、ユニオン政府を裏切って会いに行ったことにしなければいけませんね」


「市長選候補者の討論会場に侵入して移動魔法で連れ去れば良かろう。例の条約の件は気にしなくて良い。私の方から共和国に予め伝えておく。もちろん、内密にだ。ひとけの無いところで無理矢理連れ去ってしまえば話を聞かざる得ない」


「些か誘拐までするのはやりすぎではありませんか? 必死になっていると思われるのは距離を取られる原因になりかねないので、まずいかと思いますが」


「必死になって得ようとしている物が権力で無ければ良いのだ。例えば、そうだな。君は亡命政府内部では置物だったのだろう? その暮らしが良かったと思ったと言えばいいのだ」


「なるほど、立場にあぐらを掻いて三食昼寝付き、寝転がってワインを飲んでいられるような暮らしに戻りたいと言えばいいのですね。Qu'ils mangent de la brioche !」


「どうしようもないほどに怠惰な皇帝だな。革命が起これば真っ先に殺されるな」

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